従業員の資質やスキルの可視化、できていますか
コンサルタントのつぶやき人材を資本として捉え、その価値を最大限引き出すことで企業価値上を目指す人的資本経営の考え方は、すでに多くの企業で認知されているかと思います。
持続的な企業価値向上を目指す企業にとって、「人」という資本をどう活用するのかという視点はとても重要です。また、こうした状況下で、経営戦略と人材戦略を連動させていく取り組みに尽力している企業も日に日に増えていることと思います。
ところで、そもそも自社にはどんな人材がいるのか、詳細に把握できている企業はどの程度あるのでしょうか。自社の保有している人材をどう「見える化」するのか、そして可視化した後にどう配置し活かしていくのか、戦略的に実行できている企業はどの程度あるのでしょうか。
可視化への取り組み
2023年12月に日本経済新聞社とワークスジャパンで実施した人的資本経営調査(大手374社!人的資本経営調査レポート【詳報版】|日本経済新聞社 人財・教育事業ユニット) には、「能力/スキルの可視化への取り組み」についての質問項目があります。
『人材の知識、能力/スキル、資質の可視化のために、導入している検定・診断ツール・アセスメントがあれば教えてください』という問いですが、全体の45.7%、従業員規模10,000人以上の企業に限定すると53.3%が「リーダー・マネジャーとしての適性、資質、能力/スキルなどを測るアセスメント」を利用しているとの結果でした。(詳細はレポートをご覧いただければと思います)
アセスメントの利用の動機や場面は様々ですが、多くの企業で何らかのアセスメントを実施し、人材の可視化を試みているようです。
実際多くの企業の方と話していると、人事考課に加え、実施したアセスメントをタレントマネジメントシステムに反映している、ないしは、これから反映していこうとしている企業が増えているように思います。
人材アセスメントとしては、行動観察型アセスメント(アセスメントセンター)、360度評価、資質/能力アセスメント、インバスケット試験、論文試験、等を利用されることが多いと思います。
人材アセスメントツールの利用場面を聞くと、
・昇進昇格のための選別、資質の確認
・適材適所の配置のための参考
・育成計画の策定
といった答えをいただきます。
人材の資質や行動傾向、強みなどを把握し、昇進を含む最適なポジションに配置することや効果的な育成プログラムを設計することを志向しているようです。
一方、企業が可視化したいデータについて、残念ながら可視化そのものが難しいもの(スキル評価の難しさや人的リソースの問題)、可視化しても未だ活かせていないなどの課題を抱えている企業も多いように思います。一定の費用が発生することから次世代リーダー候補者など、企業としての投資優先度の高い人材に対して、アセスメントを実施している話も良く聞きます。
ISOもアセスメントに言及
ISO30414(人的資本に関する情報開示ガイドライン)においても、下記の項目の開示においては、なんらかの人材アセスメントを実施し、定量化することが望ましいのではないかと示唆されています。
『採用・異動・離職』
―将来必要となる人材の能力
『スキルと能力』
―従業員のコンピテンシーレート
ただし前提としては、事業戦略に応じた人材戦略の策定を念頭に、職種や階層ごとに求められる従業員のコンピテンシーを定め期待値を設定することと、その評価メカニズムを構築することが重要とされています。
そして、ただ人材アセスメントを実施すれば良いというわけではなく、能力開発プログラムとも紐づけて効果的な教育施策を実施することも考慮する必要があると思います。
『リーダーシップ』、『後継者計画』という項目においても、リーダーシップ開発におけるアセスメントの実施や後継者計画における潤沢な人材プール確保のために資質を計測するアセスメントなどの活用が考えられます。
(酒井 皓矢)