後継者候補をどう選抜・育成するか
コンサルタントのつぶやき2023年12月に日本経済新聞社とワークスジャパンで実施した人的資本経営調査で、「社員教育、育成の課題」について質問したところ、「次世代リーダーの発掘・育成」を挙げた企業が5割に上がりました。調査対象は従業員1,000名以上、またはプライム上場企業374社で、将来を担う人財育成が経営課題となっていることがあらためて浮き彫りとなる結果でした。今回は本連載の第4回に続いて、サクセッションプランについて皆さんと考えていきたいと思います。
前回、サクセッションプランはISO30414のガイドラインでは後継者計画の項目で①内部継承率、②後継者候補準備率、③後継者の継承準備度(即時、1〜3年後、4〜5年後)の指標で示されていることを紹介しました。今回は後継者候補人財を具体的にどのように選抜し、育成しているのか、各社の取組み事例を交えながら紹介していきます。
「優秀」の定義に変化
一般的に候補人財の選抜は人事考課や上長の推薦などを参考に、社内で優秀とされる人財が選ばれることが多いですが、いま「優秀」の定義の見直し、変化が起こっています。たしかに、現在のポジションで業績を上げていることは必要条件ですが、将来のパフォーマンスを保証するものではありません。むしろ、今後の成長の伸びしろ(ポテンシャル)や行動の源泉となる特性や動機に注目が集まっています。
選抜されるタイミング(10年後の経営人財候補か、3年以内の経営人財候補かなど)にもよるところはありますが、投資すべき人財の見極めに成長のスピード・可能性といった観点を取り入れることは必要と考えます。業績以外の指標を選抜のプロセスに取り入れることで、思わぬ人財の発掘につながるケースがあります。
皆さんの企業ではどのような人財を優秀と定義しているでしょうか。さらに社内でコンセンサスが取れていますでしょうか。
育成プログラムが多様化
選抜された候補人財の育成も多様化が進んでいます。上位層の後継者育成ではタフアサインメントなど経験を重視するプログラムの導入が主流となっていますが、それだけでは不十分ではないでしょうか。経営幹部はステークホルダーへの対外的な説明責任が求められ、経営の舵取りの難易度が格段に上がっているなか、世界情勢や技術革新、ESGやサステナビリティなどのビジネストレンドのインプットや、経営戦略や内部統制など経営に必要な実践知識の学びが求められています。
さらに、経営者としての器、人間力の醸成、ディレイルメントなどパーソナリティに関するプログラムの導入も進んでいます。最近は私たちも、自己理解のアセスメント、リーダーシップ開発、ビジネストレンドのインプット、経営リテラシーの学び、アクションラーニングやコーチングなどを組み合わせたプログラムを提供しています。
後継者育成は将来への投資であり、かつ重要な経営課題でもあります。皆さまの企業の将来を担う人財候補の選抜と育成について、検討の一助となれば幸いです。
(赤木雅樹)