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情報開示、法的義務と任意の違いは

人的資本の開示の方法には、義務的なものと任意のものがあります。義務的なものは、金融商品取引法(金商法)に基づきます。対象は有価証券報告書提出会社で、その社数は約4000社です。2023年3月期以降に終了した事業年度にかかわる有価証券報告書への記載が求められます。

有報提出会社には開示義務

また、金商法以外にも、複数の法令で人的資本に関する項目の開示が求められています。例えば、女性活躍推進法では、従業員に占める女性の割合や管理的地位にある女性の割合などの開示があります。そのほかにも、育児介護休業法では、男性の育児休業等の取得率の開示などが求められています。

それでは、有価証券報告書には、具体的に何を開示すればよいのでしょうか。5つあります。まず、「従業員の状況等」の欄に①女性管理職比率、②男性育児休業取得率、③男女間賃金格差の開示が求められています。さらに、「サステナビリティに関する考え方及び取り組み」という欄が新設され、そこに④人材育成方針や⑤社内環境整備方針、および当該方針に関する指標の内容や当該指標による目標・実績を開示することが求められています。

有価証券報告書は公式なものですから、意図せず結果的に誤った数値を載せることに不安を感じる方もいるのではないでしょうか。この点については、記載した情報が実際の結果と異なる場合でも、合理的な仮定などに基づき、適切な検討を経たものであれば、誤った記載のみをもって、金融商品取引法の罰則や課徴金が課されることにはならないのでご安心ください。

統合報告書などで情報発信

先程あげた「義務的なもの」とは、有価証券報告書のことで、法律で発行が義務付けられているものです。一方、人的資本の開示には、「任意のもの」もあります。これは、ホームページや統合報告書への記載など、各企業が独自に発行しているものを指します。

有価証券報告書が主に投資家や金融機関などプロを対象にしているのに対し、統合報告書はそれに加え取引先、従業員、就職活動の学生などあらゆるステークホルダー(マルチステークホルダー)を対象にしているのが特徴です。

また、企業によっては、統合報告書から人的資本に関する部分だけを分離し、「人的資本リポート」として発行しているところもあります。各社の判断で情報発信できる点を生かし、マルチステークホルダーにとって分かりやすい施策を実行しているといえます。

各種書類の制作にはコストがかかります。優先順位をつけ対策を練るとよいでしょう。

(横山貴士)

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