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研修費の開示、企業価値の向上に寄与

IS030414では、組織がどれだけ従業員教育に投資しているかを測るために、各種の研修参加費、自社で行う研修の外部講師料、教材費、施設利用料の合計である「人材開発・研修の総費用」を開示項目に定義しています。

この総費用を従業員数で割ったものが、従業員1人あたり研修費です。今回はこの1人あたり研修費について考えます。

上場企業は平均6万円程度

日本企業の1人あたり研修費は、一体どのくらいなのでしょうか。この分野で、40年間以上、調査を実施している産労総合研究所が2023年11月に発表した「教育研修費用の実態調査」では、22年度の従業員1人あたりの研修費用は32,412円となっています(上場企業および同研究会の会員など147社の回答)。

また日本経済新聞社が行っている「スマートワーク経営調査」では、22年度の1人あたり研修費の平均値は約57,000円(回答数834社)、東洋経済新報社の「CSR企業総覧(雇用・人材活用編)・2024年版)」の調査では、同費用の平均は約63,000円(回答数718社)でした。産労総合研究所の調査よりも、日経と東洋経済の調査の方が従業員1,000人以上の大企業が占める比率が高くなっており(スマートワーク経営調査では66%が従業員1000人以上)、大企業を中心とした上場企業の平均値は、60,000円程度だと考えられます。

各調査の共通点として挙げられるのは、1人あたり研修費が前年度比でプラスになっていることです。新型コロナウイルス渦の影響でオンラインの活用など研修の効率化が進んだものの、主体的な学習意欲を支援する教育研修、経営人材育成のための選抜型研修、グローバル対応、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進など、従業員の意欲向上や経営課題の解決につながる各種研修が拡充され、企業の教育投資は増加傾向にあります。

企業間や業界間で「教育格差」も

一方、スマートワーク経営調査では、1人当たり研修費が10万円以上の企業が全体の15%となっており、企業間の「教育格差」があることも見えてきました。各調査によると、教育投資に熱心な大手商社のうち三菱商事や三井物産などは、従業員1人あたり研修費が40万〜50万円前後という水準となっています。

また、情報・通信業や空運・海運業界も教育研修投資が多い業界です。企業間競争が激しく、変化の波をチャンスに変えるために、人材の質や能力を高める取り組みを継続的に続けてきた企業が多い業界では、教育研修への投資額が多いようです。

人的資本開示の項目のうち、女性管理職比率や男性育児休業取得率などと比べると、研修費用や研修時間を開示している企業はまだ多いとはいえません。現時点では業界や企業ごとに差があるものの、個々の企業の教育研修投資の開示が進めば、優秀な人材を集めやすくなり、企業価値向上に寄与することでしょう。自信をもって教育研修投資の数値を開示できる企業が増えることを期待します。

(梅田育男)

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