教育投資に税制優遇、人的資本経営時代の活用方法とは
コンサルタントのつぶやき産業界で、賃上げが相次いでいます。法人税負担を軽くする賃上げ促進税制を活用する企業も多いようです。今回は、この税制で、教育訓練支出によって優遇率が高まる点に注目してみましょう。
賃上げ促進税制の上乗せ要件に
賃上げ促進税制は、賃上げした企業の法人税負担を軽減する税の優遇策。
優遇率は企業規模や賃上げ幅、教育訓練にかける費用などの条件で決まります。政府にとっては、税制を通じて物価上昇を超える賃上げ実現を後押しする狙いがあります。
大・中堅企業で最大35%、中小企業で最大45%を税額控除できるため、企業が活用しない手はないでしょう。
賃上げ促進税制(税制優遇の控除率)
注目したいのは、教育訓練費による税額控除の上乗せ要件があること。教育訓練費が給与等支給額の0.05%以上あり、大・中堅企業は前年度比10%以上増加、中小企業は同5%増加という条件を満たすと、適用が可能となります。
人的資本経営時代に「新たな人材投資の幕開け」
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営の重要性が増す中、人材への投資は給与増加だけではありません。積極的な教育を施すことが欠かせないでしょう。「今こそ、人材投資の新たな時代の幕開け」と指摘する企業の人事責任者もいます。
日本経済新聞社人財・教育事業ユニットが今春まとめた人的資本経営調査でも、6割弱の企業が2023年度の教育研修投資を前年度比増額、との結果でした。主要企業が作成した統合報告書を見ても、教育研修費の増額を強調する例が目につきます。
従業員のエンゲージメント向上にも
矢野経済研究所によると、企業向け研修サービスの市場規模は2023年度に5500億円(予測ベース)とみられます。今後も市場拡大が見込まれています。
人材教育にお金をかけることが重要であることは論を待ちませんが、社員を大切にする姿勢を経営側が打ち出すことで、従業員のエンゲージメントを高める効果も期待できそうです。
教育訓練費とは、職務に必要な技術・知識の習得・向上のために支出する費用ですので、範囲は広いと考えられます。自社で研修を実施する場合の費用、外部の研修会社に委託する費用も対象になります。この税制優遇を生かして、人材投資を加速したいものです。
(村山浩一)