2025年問題と離職率について考える
コンサルタントのつぶやき団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることで、労働力不足や社会保障費の問題がより顕著になるという2025年問題が現実的な話になってきました。人手不足で業務に支障が出てしまうようなケースも出始めており、運転手が足りないことで大都市近郊のバス会社が減便や路線廃止をする、といったニュースも珍しいものではなくなっています。
定着率は企業が重視
獲得した優秀な社員が流出しないようにすることは、企業規模や業界を問わず共通する課題です。人的資本の情報開示の観点では、「離職率」や「定着率」といったデータがあり、ISO30414のガイドラインではさらに細分化した「自発的離職率」「痛手となる自発的離職率」「離職の理由」など4項目の開示指標が定められています。
定着率や離職率は、従業員がより長く働きたいと思える労働環境(成長支援、報酬、育児や介護のしやすさ、多様性への配慮など)を企業が提供できているか・いないかを表しているとも言え、その状況を改善するための施策を検討・実行できているかを継続的に見ることが重要です。構造改革で短期的に離職率が高くなったりする場合もあるので、その見方には注意が必要です。
離職の理由は個人によりさまざまですが、投資家にとっても、求職者にとっても、定着率が高い職場は概して良い会社と判断されるため、企業側にとっては重要視すべきデータの一つです。一方、離職率について、入社3年後離職率などを除いて、具体的な数字をもとに開示している企業はまだ少ないようです。
働き方改革で成果も
定着率や離職率を改善するにはどうすればよいのでしょうか。企業規模や業界、地域など、おかれた環境によってもとるべき策は異なりますが、事例としてアクセンチュアのケースを紹介します。コンサルティング業界は労働集約型で、ともすると長時間労働になりがちです。同社では全社ぐるみで働き方改革、労働時間の短縮に取り組んだ結果、離職率を半減にするという成果も獲得しました。以下の記事では大企業を中心に取り組みが進む週休3日の動きも紹介しています。
「アクセンチュア、週休3日で現場指揮 人事評価は生産性 育児・介護・学びに 離職率半減 しごと進化論」(2023年4月11日、日経電子版会員限定)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC248HK0U3A320C2000000/
人口減少社会で日本企業が競争力を高め、企業価値を向上させることは大きなチャレンジです。大企業ではジョブ型雇用の拡大などで、雇用の流動性もますます高まるでしょう。誰もが働きやすい労働環境の整備や処遇の改善、従業員が新たなスキルを獲得するための教育研修の整備など、獲得した人材が最大限のパフォーマンスを発揮するための投資は企業の成長にも欠かせません。
(梅田育男)