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問われる経営効率 生産性

日本生産性本部の調査によると、日本の時間あたり労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟の38カ国中30位で、比較可能な1970年以降で過去最低を更新したそうです(2023年12月22日日経電子版)。人的資本の開示に関する国際的なガイドラインであるISO 30414でも、生産性を測る指標として「従業員一人あたり売上高」「従業員一人あたり利益」「人的資本ROI」などが紹介されています。

今回のコラムでは、この「生産性」について取り上げたいと思います。

生産性を測る様々な指標

企業の生産性を知る方法は2つあります。ひとつは、上場企業であれば公開されている有価証券報告書などから必要な数値を抜き出し、自分で計算する方法です。もうひとつは、統合報告書などに開示されている各社独自の指標を見ることです。

例えば、伊藤忠商事では、「従業員一人あたり純利益」を生産性の指標として開示しています(2022年度は1.9億円)。計算式は、分母に「(単体の)従業員数」、分子に「純利益」を使用しています。これは、同社が他の総合商社と比べてもっとも少ない人数でより高い成果を生み出していることを示し、より「筋肉質」の企業であることを対外的にアピールする狙いが見えます。

この他、スタートアップなど成長期の企業であれば、分母に「従業員数」、分子に「売上高」を使用し、まずは利益よりも成長性やシェア拡大を重視していることをアピールしてもよいでしょう(従業員一人あたり売上高)。また、事業転換を図っている成熟期の企業であれば、どれだけ効率的に人的資本への投資がされているかを測る「人的資本ROI」がおすすめです。ISO 30414の計算式はやや複雑ですが、{売上-(全コスト-人的資本コスト)}÷人的資本コスト-1で求められます。算出された数値が大きければ大きいほど、人的資本に対する投資の費用対効果が高いことを示します。

生産性の高さが生む 好循環ストーリー

このように、一口に生産性といっても様々な指標があることがおわかりいただけたと思います。人的資本の開示では、自社固有の戦略やビジネスモデルに沿った取組み・指標・目標を開示することが求められています。他社の指標を参考にしつつも、自社の状況や目指すところを意識し、「独自性」のある開示をするとよいでしょう。

ちなみに、先程紹介した伊藤忠商事は、各種調査で大学生の就職人気ランキング1位を獲得しています。生産性の高さが自己成長を期待させ、優秀な人材の確保につながり、さらに生産性が高まるという好循環ストーリーができていますね。

(横山貴士)

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