サクセッションプランは人的資本経営の最重要課題
コンサルタントのつぶやき人的資本経営の最重要課題のひとつにサクセッションプランがあげられます。弊社、日経ビジネススクールで手掛けている日本版エグゼクティブ教育研究会においても、座長の伊藤邦雄氏より「コーポレート・ガバナンス改革とエグゼクティブ教育」のテーマでサクセッションプランをいかに設計すべきかについて、参加企業のCHROと徹底的に議論を重ねています。
今回はサクセッションプランの課題や各社の取組みについて、ISO30414のガイドラインに重ねて、皆さんと一緒に考えていきます。
2018年に制定された人的資本開示に関する国際的なガイドラインであるISO30414では、投資家や取引先など社内外のステークホルダーの関心が高い11領域と58指標で具体的な測定基準が示されています。サクセッションプランに関しては、後継者計画の項目にまとめられています。
人材の質と量を考える
①内部継承率
②後継者候補準備率
③後継者の継承準備度(即時、1-3年後、4-5年後)
3つの指標について、簡単に見ていきましょう。①内部継承率は「重要ポストに占める内部登用者の割合」、②後継者候補準備率は「リーダーのポジション数に対する、後継者候補のプール数の割合」、③後継者の継承準備度は「重要ポスト数に対する、後継者の継承準備度合を、着任までかかる時間に応じて算出した割合」を示しています。重要ポストの定義は各社で自由に設定でき、またリーダーポジションは重要ポストと同義とすることも可能です。
ここで大事な点は各社が将来、何年先にどういった人材(質と量)が必要かに基づき、重要ポストの定義と数を定めること、もう少し加えるなら、社内の人材でどれだけ充足できるかを議論することです。つまり経営戦略に連動させた人事戦略を策定することです。
社内人材の育成
米国DDI社によるリーダーシップに関する世界的な調査では、人材の供給体制に優れていると回答した組織は、グローバルで12%、一方、日本はわずか5%にとどまっていると述べられています。また人材の供給体制が厳しい状況下で、社内の人材を育成する必要性についても同調査では言及しています。
サクセッションプランにおける各社の取組みについて、特定の経営ポジションに対する将来の後継者育成だけでなく、ポストを特定せずに次世代リーダー育成や選抜研修という形で展開をしている例も増えています。将来を見越した際、リーダーのパイプラインを充足させるため、部長層、課長層の2階層でプログラムを展開するケースも多く見受けられます。私が担当した企業では、1つの重要ポジションに対して3人の候補者をノミネート(候補者は毎年入れ替える)し、5年かけて育成しているケースや、若手を抜擢することがねらいで、一定の年齢を超えると自動的に候補者リストから外れる仕組みを取り入れているケースなど、各社独自の仕組みを展開しています。
サクセッションプランでは、アセスメントを活用した人材の見極め、可視化することも大切ですが、注力すべきは計画的な育成をすること、また成長や変化をモニタリングすることにあると考えます。タフアサインメント、洞察力を高めるインプット、人間力の醸成などを織り交ぜた育成プログラムを検討いただきたいです。
人材の流動化が加速し、外部労働市場への注目が高まっている中、自社のサクセッションプランにおいて、内部人材の活用、また計画的かつ持続的な人材育成について考えるきっかけとしていただけると幸いです。
(赤木雅樹)