組織でのリーダーシップ定点観測 能力高め組織を強く
コンサルタントのつぶやき変化が激しく、先を見通すのが難しい時代の中、企業が成長し続けるためには、組織の未来を託せるリーダー人材の育成・輩出は世界共通の重要な経営課題です。
2018年に制定された人的資本開示に関する国際的なガイドラインであるISO30414では、投資家や取引先など社内外のステークホルダーの関心が高い11領域と58指標で具体的な測定基準が示されています。組織運営に関連する項目も複数あり、後継者計画、組織風土(エンゲージメントなど)、ダイバーシティ(経営層の多様性など)といった昨今の日本でも重要視されている項目のほか、リーダーシップという項目もあります。
ISOでは3つの指標
リーダーシップと言っても、さまざまな観点があり、客観的指標で表現しにくいようにも感じますが、ISO30414では何を開示することを推奨しているのでしょうか。58指標の中にはリーダーシップ関連で細分化された以下の3つの指標があります。
②管理職1人あたりの部下数
③リーダーシップ開発
3つの指標について何を開示することが期待されているのか、具体的に見ていきましょう。「リーダーシップに対する信頼」は、期待されるリーダーシップ行動に対して、上司や同僚、部下などさまざまな立場の人物のサーベイを通して分析・評価することを指しています。例えば従業員満足度調査などで、「公平さ」「誠実さ」「一貫性」といったリ-ダーの信頼に関係する項目を把握し、スコアなどを開示するわけです。組織の要であるリーダーシップの現状と改善点をしっかりと認識することが企業に求められています。
「管理職1人あたりの部下数」は、マネジメントの効率性、組織の中で偏りがないかといった組織体制の妥当性を具体的な数字で見ていくものです。業態の違いなどによって基準はさまざまですが、1人の管理職が適切に管理できる部下の数は5〜8人だと言われています。近年の日本では働き方改革やリモートワークの導入の影響、さらには新しい経営課題も増える中で、管理職の負担は増しています。チームを成功に導くためにも、管理職が能力を発揮できる状況を管理し、改善を図ることは世界共通のテーマなのでしょう。
求められる能力に変化も
「リーダーシップ開発」は、リーダー育成の実践状況を測る指標のことで、リーダーに求められる能力を高めるための研修プログラムに参加した人数や参加したリーダーの割合など、比較的数値化がしやすい項目です。日本におけるリーダー向け研修は、経営に影響のある法務・コンプライアンス、経営数字を読むための財務会計などのテクニカルスキルに加え、コミュニケーションなど対人関係能力強化などに関するものが一般的です。ただ、経営環境の変化が激しく、社員の意識・働き方の変化も進む中で、リーダーに求められるスキル・知識・思考法なども変化しています。開催数、参加人数など基本的なデータの管理に加えて、レベルに応じたテーマ設定と質の改善が重要なのは言うまでもありません。
このように、リーダーシップを様々な角度から定点観測し、課題を発見し、改善策を検討・実行することは、リーダーの能力を高めるでしょう。それはリーダーの能力を生かした組織運営、主体的に行動する部下の育成、さらには組織目標の達成、そして企業価値の向上へと結びつくはずです。人的資本経営が、誰もが活き活きと働くことのできる組織作りに繋がることを期待しています。
(梅田育男)