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人的資本の開示、2周目へ 課題は比較可能性・独自性

2023年3月期の有価証券報告書が公開されてから数カ月が経過しました。

10月からは統合報告書の公開も散見されるようになり、「人的資本の開示」という言葉は馴染んできたように思います。

各担当者の皆様はほっと一息つきたいところでしょうが、そろそろ2周目の開示に向けて情報収集を始めなくてはなりませんね。まずは1周目の開示を振り返りましょう。

1周目で開示された情報とは

各社の公開情報を見ていると、有報と統合報告書をうまく使い分けているように見えます。有報には女性管理職比率や男性育児休業取得率などを、統合報告書にはそれらをカラーで図示したものや研修の充実度などを掲載するといった感じです。

先例がない中での開示にはご苦労も多かったと推察しますが、やや辛口の見方をすると、「とりあえず最低限は開示した」という印象をもちます。なぜなら、各社似たような開示情報ばかりで独自性のある開示が少なかったからです。

人的資本の開示を進めるうえで、重要なキーワードがふたつあります。「比較可能性」と「独自性」です。

先に述べた通り、各社とも比較可能性はクリアしたと思います。独自性は、自社の戦略やビジネスモデルに沿った取り組み、指標などの開示を指します。これが難しいのは決まった開示ルールがないからです。確かに、「自由に開示してよい」と言われても、何をどのように開示するかは悩みます。24年3月期の有報2周目の開示のヒントはこのあたりにありそうです。

他社の開示情報に注目を

2周目の開示に向けて私がおすすめするのは、他社開示情報の閲覧です。

特に、独自性の部分に工夫がされている企業の情報に注目すると参考になります。例えば、日清食品ホールディングスの有報には、創業者である安藤百福氏のメッセージ「企業在人・成業在天」から始まり、「日清10則(行動指針)」など人材育成に対する独自の考えや取り組みがたくさん載っています。

SUBARUの統合報告書では、役員報酬の非財務評価として従業員意識調査の指標を採用していることや、指標の結果だけでなく内訳まで分解して開示しているところに独自性があります。最後に、人的資本の開示は2周目で終わりではありません。3周目、4周目と続いていきます。そのため、次で完ぺきを目指そうとするのではなく、まずはできるところから少しずつ開示していくのが良いと思います。担当者の皆さん、がんばってください。

今後このコラムでは、ISO30414の11項目・58指標のガイドラインにも触れつつ、日本経済新聞社教育事業ユニットの主要メンバー中心に執筆していきます。よろしくお願いします。

(横山貴士)

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