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カムバック採用、最も利用が多いのは技術職

「人材確保の戦略の要は3つ」。新浪剛史・経済同友会代表幹事(サントリーホールディングス社長)は強調します。

同氏が指摘する3点とは

①人的資本への積極的な投資、継続的な賃上げ

②キャリアデザイン、リスキリング

③明確な企業理念、パーパス経営

――です。

人材確保に各社が知恵を絞るなかで、元社員を採用するカムバック採用の導入企業も増えています。今回はこのカムバック採用について考えてみましょう。

大手が相次ぎ導入、イノベーションに期待

インターネットでカムバック採用という言葉を検索したところ、20万件がヒット。三井住友銀行、富士通、JR西日本など大手が制度化していることが分かります。日経電子版では13件の記事がヒット。味の素AGF、南海電鉄などが相次ぎ採用していました。単に自社のことをよく知っている人材だから、というわけではありません。例えば2023年10月に導入した味の素AGFは、元従業員が持つ多様な知識・経験を生かして、イノベーション創出などにつなげる狙いがあります。

リクルートが展開する、元社員を迎え入れるカムバック採用代行サービスでも登録者、導入企業数が大きく伸びています。日本郵政、中部電力など大手も活用。企業内で退職者は裏切り者ではなく、即戦力という発想に変わってきたことが大きいのでしょう。

7割弱の企業が経験済みとの調査も

プロフェッショナルバンク(東京・千代田)が2023年2月に企業向けに実施した調査では、再雇用を実施したことがあるとの回答が67%を占めました。きちんとした制度化をせずに実施した企業も含まれるのでしょうが、それでも多くの企業ですでに使用していることが分かります。

再雇用時の選考方法については、「選考しない」が10%、簡易選考が58%と、全体の68%が通常の選考とは異なる採用方法をとっていました。再雇用後の職種をみると複数回答で、技術職が50%で1位、営業職が31%で2位です。いずれも多くの企業で優秀な人材の採用難に悩む職種といえます。カムバック採用に馴染みやすい職種という面もあるのでしょう。

課題はあるが産業界の関心は大きい

広がりをみせるカムバック採用ですが、手放しで拡大できるわけでもないようです。上記の調査では、問題や課題があるとの回答が48%と、半分近くに上りました。また、既存社員との処遇差、不満の発生や再退職のリスク、再雇用制度の未整備などが代表例です。既存社員への悪影響、スキル・経験の把握なども、課題として残っているとの回答がありました。

この調査では、再雇用未実施企業のなかで、75%が今後検討するとしています。課題は残りつつも、産業界でカムバック採用への関心の高さが伺えます。今後は各社が制度整備をすすめながら、産業界でさらに浸透していくことは間違いなさそうです。

(村山浩一)

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