HRBP、人事ビジネスパートナーは産業界に定着するか
コンサルタントのつぶやき今回はHRBP、人事ビジネスパートナーについて考えてみましょう。日本でも導入する企業が少しずつ登場しています。HRBPは、経営者や事業責任者のパートナーとして、組織体制や人材戦略を提言、実行する戦略人事の専門家です。日本の産業界に定着するには少し時間がかかりそうですが、VUCAの時代に攻めの戦略人事を実施し、タレントマネジメントを推し進めるキーワードとなるかもしれません。
DeNA、カゴメなど日本でも導入例
HRBPの英語表記はHuman Resource Business Partner。日本語では人事ビジネスパートナーと呼びます。HRBPは日本ではディー・エヌ・エー(DeNA)、カゴメ、メルカリ、ベネッセホールディングスなどが導入しています。
2023年10月25日の日経電子版に載った日経クロステック記事「部門人事の重職担う『HRBP』 日本企業に定着するか」では、ベネッセHDが2020年にDX部門にHRBPを設置し、現在では10人に増えたと伝えています。記事中、「組織の形をつくり人材配置を決めるのは、その組織の長の仕事だ。事業課題を人事や組織の課題として解き直す専門家が参謀として支援する必要があると考えた」とベネッセHDの橋本英知専務執行役員が答えています。
ウルリッチ教授が提唱、戦略のパートナーとの位置づけ
HRBPはそもそも、米ミシガン大学経営大学院のデイビッド・ウルリッチ教授が1990年代に提唱したもの。ジョブ型雇用が一般的な海外では、役割が明確なため、HRBPを活用する例が多いようです。
ウルリッチ教授は、人事機能として4つの役割を定義しています。
・戦略のパートナー:戦略を実現するパートナーとしての役割
・管理のエキスパート:生産性を高めるため、従業員やチームを管理
・従業員のチャンピオン:従業員の声を吸い上げ、経営層に伝える
・変革のエージェント:組織に必要な変革を推進
このうち、戦略のパートナーがもっともHRBPの要素が強い内容です。
HRBPと似て非なる言葉にCHRO(Chief Human resource Officer、最高人事責任者)があります。CHROはあくまで経営幹部。これに対して、HRBPは経営者や事業責任者のパートナーとして、CHROらが策定した人事戦略を理解し、現場に落とし込む機能が欠かせません。
記事数はCHROの24分の1
日本経済新聞社の過去記事をHRBPで検索したところ、最初に記事が載ったのは2017年12月のこと。武田薬品工業が18年1月1日付で、グローバル製薬サプライ日本・アジア光工場にHRBP室を新設するという内容でした。
その後、徐々に記事が増え、2023年11月までに合計46件が掲載されています。これに対して、CHROで検索すると、2000年4月にみずほホールディングスのCHRO人事を最初として、これまでに合計1114件が掲載されています。HRBPの記事件数は、CHROと比べると24分の1と少ない印象です。
人的資本経営の時代に、社内のエンゲージメントを高めながら、戦略人事を遂行するため、HRBPをどう使いこなしていくのか。日本でもジョブ型に転換した企業で、導入事例が増えていくことでしょう。特にグローバル展開する企業であれば、活用の余地は大きそうです。事業戦略の支援と加速にどれだけ貢献できるか、注目したいところです。
(村山浩一)