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階層別研修を行う目的や実施時のポイント|階層別に取り入れたい研修内容を紹介!

階層別研修とは、年齢や勤続年数、役職などに応じてそれぞれに必要な知識やスキルの習得を目的とする研修です。本記事では、階層別研修の目的や企画・実施にあたってのポイントを経営者や人事担当者に向けて解説します。

階層別研修とは

階層とは「新人社員」「若手社員」「中堅社員」「管理職」など、社内での役職や立場を指します。階層が上がると求められる役割も変わります。当然、役割を果たすのに必要な知識やスキルも変わってきます。

階層別研修における「階層」は企業や業種によってさまざまですが、おおむね以下の4つです。

階層別研修の必要性

企業の発展には、社員が各自に求められる役割期待を理解し、主体的に行動し、成長していくことが求められます。しかし、階層ごとに求められる役割やスキルは社会情勢によって変化しています。

そこで、社内での役職や立場が変わる場面において、階層別研修が必要になるのです。

新入社員・若手社員やチームの成長・活性化を担う中堅社員の育成は、企業の成長に不可欠。新入社員や管理職に加えて近年、特に重視されるのが中間層に対する教育で、ここが後手に回っている企業も多いようです。

「HR総研」が実施した「人材育成(階層別研修)」に関するアンケートでは、中堅社員研修の実施状況は「実施している」が3割強、「実施していない」が6割強 と実施していない企業が多数でした。新入社員研修の実施率は8割以上、管理職研修の実施率55%であるのと比較して、中堅社員研修には手つかずの企業が多いという結果が出ています。

中堅社員は組織の中核を担う人材です。中堅社員への教育の拡充は、管理職や次世代リーダーの育成につながります。各階層別の教育の充実は、組織の成長を促す起爆剤でもあるのです。

階層別研修のタイミング

多くの企業・組織では、入社時(新人)、3年目、5年目といった節目での年次別の階層別研修をベースに、以降は現場リーダークラス、課長・部長などの管理職昇格者や、昇格予定者などを対象とした選抜型の階層別研修を実施する形を取っています。

各階層に求められる役割を理解し、スキルを身につけていくことは、個人のスキルアップにとどまらず、組織全体の人的資本レベルの底上げにもつながっていきます。このような特性から、階層別研修は企業の「底上げ教育」とも呼ばれているのです。

職務ごとに必要なスキルや要件を明示するジョブ型雇用においても、「ロール=役割」 が変わったタイミングでの研修を通して行動と実践を促していきます。

また、行動や実践に関して経済産業省は、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力として「人生100年時代の社会人基礎力」を定義しています。「人生100年時代の社会人基礎力」は、リフレクション(振り返り)を通じて自分の在り方を自分で決め、3つの視点(目的・学び・統合)のバランスを図りながら、能力を発揮していくことで自らのキャリアを切り開くとしています。

階層別研修で階層ごとに求められる役割を知り、知識の習得とリフレクションを行うことで、個人の成⻑と企業の成⻑のベクト合わせができ、生産性向上の実現が可能となるのです。

引用元:経済産業省│人生100年時代の社会人基礎力」

引用元:経済産業省│人生100年時代の社会人基礎力」

階層別研修の目的

階層別研修の目的は主に2つです。

階層別研修を行う目的
・会社が希望する役割を理解してもらう
・必要な知識やスキルを習得する

会社が希望する役割を理解してもらう

階層別研修の1つ目の目的は、会社の希望する役割を理解してもらうことです。

各階層にはそれぞれ果たすべき役割があります。階層別研修の受講で、新たな階層に移ったすべての社員に会社が期待する役割を理解してもらい、結果として期待に沿うパフォーマンスを発揮してもらうことができるのです。

各階層が担う主な役割は、以下のイメージです。

階層が上がれば新しい役割が与えられます。人によっては不安や焦りを感じることもあるでしょう。研修では、同じ立場・経験年数の社員が集まります。

同じような悩みなどを持つ者同士が話す機会は貴重です。日頃の悩みを相談したり、思いを伝え合ったりすることで問題の解決やモチベーションの向上につながります。

必要な知識やスキルを習得する

階層別研修の2つ目の目的は、必要な知識やスキルの習得です。

当該の階層に求められる役割を理解はしていても、業務を遂行できなければ意味がありません。階層が上がると求められる知識やスキルが今までの階層よりも格段に増え、多種多様となります。

そのため、OJT(職場内訓練)や自己啓発だけでスキルアップするには限界があるでしょう。そこで、対象者が該当階層に移った直後に階層別研修を実施して、業務で実践できるように知識やスキルのレベルアップを図り、その階層にふさわしいパフォーマンスを発揮できる状態に導くのです。

階層別研修を実施するポイント

階層別研修を実施するときのポイント
・求める役割や人物像を明確にする
・会社が求める役割を常にアップデートする
・アウトプットできる場を意識して設ける
・パッケージ化された外部研修はおすすめではない

階層別研修では、各階層の人材要件に基づいて組織の人材育成方針や人事評価を実施するものです。ここでは、効果的な階層別研修を実施するためのポイントを紹介していきます。

求める役割や人物像を明確化する

効果的に階層別研修を実施するには、階層ごとに求める役割や人物像を明確にして、教育体制を体系化していくことが必要です。

それぞれの階層において「どういった人材を求めているのか」「どういった人材になってほしいのか」「どのような役割を期待しているのか」を明確にした上で、「どのような知識・スキルが必要か」を定義づけていきます。そのうえで、現状とのギャップを埋める研修内容を実施していきます。

会社が求める役割を常にアップデートする

階層別研修は、常に「自社の状況にあっているか」を考えながらカリキュラムを検討していく必要があります。社会情勢の変化によって、会社が各階層に求める役割を常にアップデートすることも必要です。

経営戦略や事業方針によって、その役職に求める役割も変わってくるでしょう。そのため、毎年実施する研修であっても改善する姿勢が必要です。

現在、自社はどのような課題を抱えているのか、その課題をクリアするには、どのような人材を育成するべきかを考え、内容をブラッシュアップさせていきます。ただし、すべての内容をブラッシュアップしていくわけではなく、「守破離の思想」を持ってください。

自社の理念やマインドなど「変わらず伝えていきたいこと」と「変化させていくべきこと」を明確にしながら、新たな価値を創造していきましょう。

アウトプットの場を意識して設ける

アウトプット(output)とは、日本語訳で「出力」、学習した知識やスキルなどを行動に反映させて成果を出していくことです。研修では、知識・スキルをインプット(input)=「入力」します。学習は、インプットとアウトプットの両方を組み合わせてこそ効果を発揮します。

アウトプットには、大きく分けて「書く」「話す」「行動する」という3つの方法があります。研修では、単元ごとに振り返りをして、個人ワークとして気づきを記入したり、グループワークで話し合ったりします。

話すことで頭の中が整理され、理解を深めるのに有効です。新入社員研修など演習形式の研修では、挨拶トレーニングなど学習した知識をロールプレイングで実践してみることもあります。研修受講後の実施報告書や行動目標シートの作成はアウトプットの一環でもあります。復習のタイミングは早ければ早いほど効果的です。

そのため、座学の後に小休憩を挟み、すぐに復習として現場に立たせるなど、知識・スキルをアウトプットできる機会を早めに設けておくとよいでしょう。

記憶量と復習による効果

ウォータールー大学は実験として1時間の講義を行い、被験者の記憶量と復習による効果をグラフ化しました。その実験によると、人の脳には以下のような特徴があるとされています。

復習のタイミングを考えるポイント
・講義内容を復習しない場合、30日後にはほとんどの知識を忘れる
・講義から24時間以内に10分の復習をすると、記憶が100%(講義直後の状態)に戻る
・講義から1週間後に2回目の復習をすると、5分で記憶を取り戻せる
・講義から1カ月後に3回目の復習をすると、2〜4分で記憶を取り戻せる

アウトプットのメリット

アウトプットをすることで、以下のメリットがあります。

スキルが定着する

知識やノウハウは、学んだだけでは身についたとは言えません。アウトプットして、実際に業務に役立ててこそ身についていくのです。何度もアウトプットを繰り返すことで、スキルが定着していきます。

仕事に自信が持てる

インプットとアウトプットを繰り返してスキルが定着すると、仕事の質が向上し、自信にもつながっていきます。自信をもって仕事を実践していけば、パフォーマンスも自ずと上がるでしょう。結果として仕事で成果を出すことができれば、周囲からの評価も高まります。

キャリアを形成できる

知識やスキルを部下の指導など「教える」という形でアウトプットすることで、キャリア構築にもつながります。

パッケージ化された外部研修のデメリット

階層別研修を実施する際は、パッケージ化された外部研修はあまりおすすめではありません。

もちろん、外部研修自体は人材育成に大いに有効です。しかしながら、会社や個人によって取り巻く状況は違うため、すでに出来上がったパッケージではなく、自社の現状に合ったオーダーメイドの研修カリキュラムを実施することが大変重要なのです。

階層別研修のカリキュラムを見直しいていくことで、自社の課題が明確になってきます。各階層で目指す人物像とのギャップを明確にして、そこに必要な内容の研修を選択していくことが大切です。外部の研修会社に講師を依頼する際は、自社の現状をしっかりとヒアリングして共に考え、カスタマイズしてくれる会社を選択するとよいでしょう。

【階層別】研修内容の事例

続いて、階層別に必要な研修内容を紹介していきます。

新入社員研修

新入社員研修は、企業によって実施項目が多種多様です。期間も数日〜数カ月とバラつきがあり、短い場合は1週間以内、長い場合は1年以上というケースもあります。

短期の場合は集合型研修が中心、長期の場合は現場でのOJT実践研修まで含みます。

・コンプライアンス・ビジネスモラル

・ビジネスマインド(学生から社会人への意識改革)

・ビジネスマナー

・OA

・ビジネス文書・ビジネスメール

・リジリエンス

若手社員研修

企業の中核を担っていく若手社員には、問題解決力や後輩指導などさまざまな自発的な活動が求められます。任された役割をしっかりと果たすことで、1人で業務を遂行できる力を身につけさせ、さらなる土台の強化につなげます。

・コミュニケーション

・ロジカルシンキング

・問題解決と論理的思考

・プレゼンテーション

・OJT指導者としての部下育成

中堅社員研修

中堅社員は自身の通常業務だけでなく、組織横断的なプロジェクトなどにおいて、オーナーシップを求められる立場です。また上司を補佐するだけでなく、後輩などの手本として彼らを支えるためのフォロワーシップも必要になってきます。

そのため、以下のような内容が求められます。

・リーダーシップ

・オーナーシップ

・フォロワーシップ

・課題発見・問題解決

・ファシリテーション

・マネジメント基礎

・ネゴシエーション(交渉力)

管理職研修

管理職は、他の階層と違って昇進・任命のタイミングが異なるのが一般的です。

研修内容は、経験値や身につけたいスキルによって変化します。例として新任管理職であれば、管理職としての心構えや役割を学ぶことがメインとなります。

・管理職の役割

・部下育成とチームビルディング

・コーチング

・コンセプチュアルスキル

・評価者・内部統制

・組織マネジメント

・ハラスメント

・リスクマネジメント

・メンタルヘルス

まとめ

今回は、階層別研修の目的、階層別研修内容や実施において必要なことに関して解説しました。前述した通り、階層別研修には、新入社員研修や管理職研修などがあり、その階層で求められる必要最低限のスキルの習得を目的として実施されます。階層ごとに適した研修の実施で、企業価値の向上や社員の意識改革につながるでしょう。

各階層に必要なスキルは企業・組織によって異なるので、自社に適切な階層別研修は何かを体系立てて企画することが重要です。階層別研修を積極的に取り入れ、人的資本を高めていきましょう。

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