研修後アンケートの必要性|効果的な設問やアンケートを作るときのポイントを紹介!
人財育成のヒント研修実施後のアンケートは、受講者の満足度や理解度確認のために実施している企業も多いことでしょう。ただし、「研修の成果が実際の現場で生かされているかがわからない」という担当者の声も多く聞かれます。中にはせっかくアンケートを実施しても「目を通して終わり」になっている企業もあるようです。
本記事では、そのような課題を抱えた担当者の人に向けて、「アンケートは何のために実施するのか」「意味のある項目や質問例」「成果の確認の仕方」などについて解説していきます。
研修後アンケートの必要性
教育や研修の効果測定においては「カークパトリックモデル」が有名です。1959年にアメリカの経営学者ドナルド・カークパトリックによって提唱された、教育の効果を4段階で評価するフレームです。
・学習:研修内容の理解度ほか
・行動:行動変容
・結果:組織への価値をもたらしたか、投資対効果
企業によっては「重要なポジションになるほど研修の成果が出ていない」という課題も耳にします。その場合、研修の実施前と後とでの行動がどのように変わったか、さらにその行動が業績に影響を与えたか、つまり「行動」と「結果」まで評価することが必要です。
研修の成果を出すには、適切なアンケートを実施することで問題解決にもつながります。
アンケートを作るときの注意点
アンケートを作る際、気を付けたいポイントは以下の通りです。
・研修の目的からバックキャスティングしたアンケートを設計する
・行動変容を取れるアンケートを実施する
・上司と本人など両方から取る
・研修自体の評価と研修の効果の評価は分けて考える
そもそも研修アンケートは「何のために実施するのか」を考えることからスタートします。そして研修の目的に照らし合わせて「いつ、誰に対して、どのような内容を問うのか」を具体的に考えましょう。
次項からは、主な内容について解説していきます。
研修の目的からバックキャスティングしたアンケートを設計する
研修のアンケート設計において重要なのは、研修の目的を外さないことになります。なぜなら、各研修には必ず目的があり、アンケートの実施も含めて最終的に目的を達成できたといえるからです。
例えば、「〇〇研修で学んだスキルを生かして、□□ができる人材になる」という目的があった場合、研修終了時点での成果確認は難しいでしょう。なぜなら、現場での実践が必要になるからです。
このようなケースでは、その後数カ月間で行動がどう変わったか、どのような成功体験があったのかなどを追うことで、最終的な研修の成果を把握できます。
つまり、目的からどのようなアンケートが必要なのかバックキャスティングした設計が大切です。
行動変容を取れるアンケートを実施する
研修の成果を計る方法のひとつは、行動変容の確認です。研修においては「研修の実施前と後とで本人の変化」、さらに「その行動が定着したか」も含めて検証します。そのためには、研修後の行動を追うアンケートが有効です。
「行動変容」のアンケートにあたり、気を付けておきたい点は以下になります。
・どんな場面で活用できるか、具体的にイメージできる研修であること
・行動変容の評価は抽象的になりがちなので、具体的に問うこと
上司と本人など両方から取る
研修成果において、研修で学んだ内容をどれだけ自分の職場に戻っていかせるか、継続できるかが重要です。ラーニングトランスファー(移転学習)が鍵となります。
そのためには、上司の理解と協力が必要です。部下がどのような研修を受け、今後どのように頑張ろうとしているのか上司が把握してはじめて、職場での研修成果の発揮が期待できます。
例えば、研修参加直後、受講者と上司の間で以下のことを行います。
・研修で学んだ知識やスキルを職場でどう生かしていくのか、今後の目標を共有する
・上司から、あらためて期待を伝える(必要に応じてアドバイス)
その後は本人だけでなく、2週間・2カ月など一定期間をおいて行動変容が見られたかを上司に聞くことも、成果確認において有効な手段です。
研修自体の評価と研修の効果の確認は分けて考える
研修の成果を把握するうえで、研修自体の「評価」と「効果」を分けて考える必要があります。
研修に対する満足度や研修での気付きを、実施直後に確認するのが「評価」です。
対して効果とは、研修での学びをその後どのように生かせているのか、行動変化を数カ月後などに確認する作業になります。
中には、研修の「効果測定」=「研修実施直後のアンケート」と思っている人もいます。実施直後のアンケートは、満足度調査や理解度確認、感想にすぎず、研修の効果測定ではありません。
研修後アンケートの効果的な設問例
研修後アンケートの設問は、さまざまな内容があります。回答方法も基本は選択式、設問によっては記述式、選択と記述の組み合わせもよいでしょう。成果の確認に有効な設問をいくつか紹介します。
設問例:講義を受講するにあたって、学びたいと考えていたことはなんですか
研修受講前の期待が、実際に参加してどの程度満たされたかを確認する質問です。事前期待に対する満足度を確認したい場合、また受講者がどのようなことをイメージして参加したのか、背景を知ることができます。
場合によっては、受講対象者に対して研修の1カ月ほど前に事前アンケートを実施するのも有効です。事前アンケートの内容を当日研修内で触れることで、満足度の向上につながります。研修案内と同時に、「研修で具体的に知りたいこと」「研修へ期待すること」など、簡単な記述方式で尋ねるとよいでしょう。
設問例:本講義の満足度を評価してください
満足度の確認は定番の設問です。研修の主催者として、自分達の評価にもつながるため、人によっては特に気になる内容だと思います。例えば、中央を「ふつう」に設定し、選択式で「満足・やや満足・ふつう・やや不満・不満」までの5段階評価が一般的です。
また、下段に選択した理由の記述欄を設け、回答の背景を把握するのも有効です。特に「不満」や「やや不満」を選んだ場合、なぜそうなのか主催者としては知っておきたい情報です。
設問例:本講義の他者への推奨度を評価してください(NPS)
他者への推奨度=満足度の確認にもつながります。「良いものはほかの人へも勧めたい」という心理から、満足度が高い研修ほど他者への推奨度は高くなる傾向です。
こちらも、5段階評価の選択式にし、その理由も書ける欄を設けるとよいでしょう。理由は必須とするのか、自由記述とするのかは企業によってさまざまです。
また、具体的に「推奨したい相手」を書いてもらうのも有効です。シンプルに「よかったので勧めたい」理由を書くケースもあれば、「この内容は若手だけでなく管理職が知っておくべき(できていないから)」といった組織の課題が見えてくるかもしれません。
設問例:講義の実用度を評価してください
実用度の設問をシンプルにいえば、仕事に役立つ内容か役に立たない内容かです。主催者側のよくある課題、「研修の成果が実際の現場で生かされているかがわからない」に対して、直接ヒアリングする方法です。選択式をベースに、記述欄も設定するとよいでしょう。
この設問の回答結果を通して、例えば以下の課題が見えてきます。
・実用度の満足度が高い:業務に生かせる内容があった、現実的な内容だった、具体的にできそうな事例があった
・実用度の満足度が低い:実際の業務とかけ離れた内容だった、非現実的な内容だった、具体例が無かった
実用度の評価が低い傾向が出た場合、今後、より受講者の課題や業務に直結した内容への見直しが必要です。
設問例:講義の内容を受けて、明日から実践できること、実践したいことがあれば教えてください
講義の内容を実際の仕事でどのように活用できるかを確認する設問です。この設問によって、講義内容と自分の仕事を関連付けて考えるきっかけにもなります。
例えば、「〇〇の言い方は、後輩育成で明日から実践してみようと思った」や「〇〇の提案の仕方を次回の営業訪問で実践してみようと思う」のように、講義のどの部分が受講者によって有益だったのか知ることにもつながります。
この質問は、選択式ではなく、記述欄を設けて具体的に書いてもらうのがよいでしょう。
設問例:講義時間や期間が適切だったか
講義時間の設定が「受講者にとって」適切だったかどうかを確認する設問です。選択式の設問にし、5段階評価がよいでしょう。
評価の表現はさまざまありますが、「長すぎた・やや長い・適切・やや短い・短すぎた」が一般的によく使われる項目です。下段に理由の記述欄を設けて、選択した理由を確認してもよいでしょう。
例えば、「長すぎた」の回答が多かった場合、退屈な講義だった可能性も高いです。また、「短い」を選んだ場合、「充実した講義だったのでもっと学びたかった」という好評価からの選択もあれば、「この内容に対して時間設定が短すぎる(情報量が多すぎる)」という不評に近い選択の場合もあります。
今後の研修全体を見直す材料になります。
設問例:研修内容について理解しやすかったか
理解しやすかったかどうかは、内容や講義する側の評価の確認ができます。「研修内容」の理解度は、講義する人の教え方、内容そのもの、投影・配付資料といったツールも含まれるからです。
例えば、「講師の教え方はわかりやすかったか」「そもそもわかりやすいテーマ設定だったか」「見やすい資料だったか」など、どれかに不満や課題があると設問回答は評価が低い傾向が出やすいです。
選択式をベースに、記述欄を設けて理由も確認するとよいでしょう。
設問例:研修内容は役立つものだったか
受講者にとって「役立つ」内容だったかを確認することで満足度を測ります。実用性の満足度を確認する質問と近い内容ですが、さらに広義な回答を得るのが目的となります。基本的に、すべての研修に対して有効です。
研修のテーマによっては、現在担当している業務内容に直結しない研修も存在します。「全社員教育」や「キャリア研修」なども一例です。そのような場合は、実用度ではなく、役立つ内容だったかを問うとよいでしょう。実用度同様、選択式をベースに、記述欄を設けて理由も確認しておきたいところです。
設問例:最後に改善点やご意見・ご要望がないか
研修全体に対して「改善点やご意見・ご要望がないか」を知る狙いから、最後に自由記述欄を設けておきます。この設問は、幅広い意見や要望が出てくるので、次回以降の研修計画にとても有益な情報となります。
例えば、会場や設備などの環境面で運営側が気付かなかったこと、中には講師へのお礼や感想など、直接伝えられなかったことを記載する方もいます。全員が意見や要望を持っているとは限りません。必須ではなく該当者のみ自由記述とすることもポイントです。
また、アンケートの様式を作る際、「記述」を求める問いは最後に設ける方がよいです。記述式アンケートは選択式と比べ、心理的ハードルが高くなります。最初から記述を求めると負担が大きく、最後に実施するのが定番です。仮にこの設問に対してしっかり記入してほしい場合、アンケートの回答時間を長めにすることも必要です。
その後2〜3カ月後に研修後の評価を聞こう!
研修効果を確認する方法として、実施後2〜3カ月など一定期間が経ったあたりで再度評価することも効果的です。研修の成果測定のひとつ「行動変容」 は、結果が結びつくまでに時間がかかることもあります。
ひとつの目安として2〜3カ月、テーマによっては1カ月後や半年後でもよいので、主催者からリマインドアンケートを実施します。その結果、以下のような効果も得られます。
・研修内容を思い出すきっかけになる
・結果的に、組織として研修の定着率がアップする
例えば、このような内容で実施します。
・研修後の評価や成果についてあらためて振り返る質問(研修で学んだスキルを生かした成功体験など)
・研修内(もしくは後)で立てた目標があればその結果の振り返り
まとめ
研修効果を測定する方法として研修アンケートがもっとも有効です。アンケートをうまく活用することで、研修の成果を高めることにもつながります。またアンケートの回答内容は、主催者側にとって今後の改善につながる有益な情報です。実施して終わりではなく、集計し、分析し、次につなげていきましょう。
実施にあたっては「どれだけ本音で答えてもらえるか」も重要です。特に「研修自体の評価」は本音で書きやすい無記名とするのも有効でしょう。ぜひ参考にしてください。