企業が海外研修を行うメリット・デメリット|有意義な研修にするためのコツを紹介
人財育成のヒント海外に直接行き、現地で学習や就業活動、ボランティア活動を行う海外研修は、グローバル化が進んだ現代で注目の研修形態となっています。ただし海外研修はまだ一般的に馴染みがなく、企業として前例がない場合も少なくありません。
そこで、この記事では海外研修の種類、海外研修を取り入れるメリット・デメリット、意味のある海外研修を行うためのコツについて解説しています。本記事を参考に、グローバル人材育成に効果的な海外研修を企画してみましょう。
海外研修の種類
海外研修とは、文字通り海外に社員を派遣し、現地で研修を行ったり、大学・ビジネススクールで学んだりするものです。
日本国内では習得が難しい語学力や最新の業界トレンド、異文化コミュニケーションスキルを身につけられるため、グローバル人材の育成においては効果的な研修の一つです。
海外研修には主に以下の種類が存在します。
・語学研修
・専門分野特化研修
・現地調査
・インターンシップ
・海外ボランティア
・現地企業の視察
・大学への留学(MBA)
語学研修
語学研修は、英語をはじめとする外国語を身につけることが目的の研修です。研修に参加する社員の英語レベルにもよりますが、ビジネスレベルの英語(TOEIC700~800点)の習得が目標の場合、1年から1年半の期間が目安です。
現地の語学学校に通い、文法や読解の基礎的な内容から会話におけるスピーキング、リーディングの講習を受けるのが一般的です。国内で語学スクールに通うこととの違いは、日常的に外国語に触れる機会が増え、聞いて話す経験をたくさん積める点です。読み書きはできるけど、会話が苦手な方にとっては、大きなメリットのある研修方法です。
実践的な外国語を学べるため、外国人の顧客や関係者とのコミュニケーションが求められる企業を中心に、語学研修は取り入れられています。
専門分野特化研修
専門分野の最新技術やトレンドを学ぶために、海外で専門分野の特化研修を行うのも効果的です。最新技術やトレンドは、日本国内よりもアメリカをはじめとする英語圏の国の方が進んでいることが多くあります。
具体的には海外の大学や研究所、ビジネススクールに通い、授業や講座を受けたり、技術者と交流したりする経験を通して、専門知識を学びます。
専門的な知識はもちろん、必然的に語学の勉強にもつながるため、専門知識と同時に語学力も身につけたい社員に適した研修です。研修期間は、1週間から3週間程度の期間を目安に企画されています。
情報の鮮度が重要である、新規技術や製品を開発・販売している企業においては、取り入れたい研修の一つです。
現地調査
現地調査は、現地のリアルな実態やユーザーの声を調査するためには有効な手段です。
海外の情報を入手しようとすると、インターネットや文献では限界があります。現地に行くことで自身の耳にした情報より遥かに高い解像度で、現地の状態や問題を学べます。
企業が解決しようとしている課題について理解を深めるためには、実際に問題が顕在化している地域で調査・研修することは非常に効果的です。
インターンシップ
インターンシップとは、学生が就職希望の企業の中に入り就業体験をするものが一般的です。しかし、すでに企業に属している社会人が、他企業に入り就業体験をするものも最近では注目されています。
異なる業種の経験や企業風土に触れることで、スキルアップや社内の活性化につなげる狙いがあります。
期間は1週間から3週間程度の夏休みや有給休暇を活用した短期インターンシップ、1ヶ月〜半年程度の長期インターンシップなど、目的によって異なります。海外企業へのインターンシップだけでなく、海外にある日本企業へのインターンシップもあり、外国語に自信のない社員でもチャレンジできる制度です。
海外ボランティア
海外ボランティアは、文字通り海外でのボランティア活動を通して、現地の方とのコミュニケーションや社会問題に対する理解を深めることを目的とした研修です。
ボランティアでは、ボランティア活動の参加者や現地の方とのコミュニケーションをたくさん経験するため、語学力が伸びることが期待できます。
具体的には、海外にある日本語学校で教師のアシスタントや、孤児院ボランティアなど多種多様なものが存在します。社員研修を兼ねた社会貢献活動ができるボランティアは、多くの企業で注目されている研修形態の一つです。
現地企業の視察
インターンシップとは異なり、企業内に入って就業体験をするのではなく、現地企業の就業環境や工場などを視察するものです。海外には就業環境や工場の作りなど、日本とは異なる点が多くあります。
日本にはない海外の良い点を発見・取り入れることで、社内活性化が期待できます。
特に働き方は日本と海外で大きく異なる場合が多くあります。働き方改革を推進したい企業においては、日本の当たり前を打開していくきっかけになるため、注目されています。
大学への留学(MBA)
グローバル化が進む現代において、大学への留学が注目されています。特にMBAと呼ばれる、日本における経営学の大学院課程の修了を意味する学位取得の研修が人気となっています。
経営に必要な知識の習得やグローバルな視点を身につける目的で、企業の経営層やリーダー候補を対象に行われています。
MBAプログラムは2年程度の期間を有するものが主流です。実際に海外の大学の講義や、グループワーク、ディスカッションを通して、経営の知識とビジネススキルを学べます。
経営知識や海外語学力が身につくため、外資系企業やコンサルティングファームの企業で多く取り入れられている研修形態です。
海外研修を行うメリット
海外研修を取り入れる前に、メリットを理解し、研修の目的や向上させたい能力に適しているか検討しましょう。海外研修には以下のメリットがあります。
・語学力や外国でのコミュニケーション力が向上する
・グローバルな視野や発想が得られる
・海外に人脈を築くことができる
語学力や外国でのコミュニケーション力が向上する
海外研修で最も効果が期待できるのは語学力の向上です。海外で研修することで、研修中あるいは滞在期間中の生活において外国語に触れる機会がたくさん出てきます。
現地の方とのコミュニケーションを通して、語学力が自然についてくることは少なくありません。
今後はグローバル化が進み、英語をはじめとする外国語が必要な業界、職種が増えてきています。外国語に抵抗を感じていても、グローバル人材を社内で育成することで、企業のグローバル展開や多様化が期待できます。
グローバルな視野や発想が得られる
グローバル化において語学はもちろん、多文化への理解やグローバル市場に対する知識も非常に重要な要素です。現地の方とのコミュニケーションや、実際に海外で生活することで、文化や価値観、考え方の違いを認識できます。
グローバル化が進む現代を担う社員にとっては、有意義な経験になるでしょう。
社員がグローバルな視点や理解を持つことで、新たな発想や業務改革がより推進されます。特に働き方改革を推進する企業にとっては、日本と海外で働き方のスタンダードが異なることを認識することが、改革の第一歩となるでしょう。
海外に人脈を築くことができる
これから海外で事業を展開していきたいと考える企業にとって、海外拠点での人脈はとても貴重です。コミュニケーションや国際的なビジネス取引をすることで、海外企業や顧客との信頼関係やビジネスパートナーシップを築くことができます。また、関係構築ができ、継続的な交流をしてくことで、最新情報をお互いに共有できるメリットもあります。
海外展開を目指す企業は、社員の育成目的と合わせて人脈づくりの観点で、現地企業や団体との積極的なコミュニケーションが重要です。
海外研修を行うデメリット
海外研修にはたくさんのメリットがありますが、同時におすすめではない点についてもしっかりと認識しておく必要があります。海外研修のデメリットは以下の通りです。
・研修費用が高い
・研修成果が得られるまでに時間がかかる
研修費用が高い
海外研修の最大のデメリットは、研修費用が高いという点です。学費はもちろん、滞在中の生活費もかかり、国によっては日本よりも生活費が多くかかる場合があります。さらに交通費も追加で必要なため海外研修には多くの費用がかかることがわかります。
国内での研修と比較すると費用は高くなりますが、語学力の向上はもちろん国内では経験できない貴重な体験ができるため、費用対効果が高い研修といえるでしょう。
研修成果が得られるまでに時間がかかる
語学力は一朝一夕で身につくものではありません。そのため、研修成果を得るために時間がかかってしまう恐れがあります。
一般的に英語が話せるようになるまでに3000時間もの期間が必要であると言われている点からも、語学力の取得には時間がかかることがわかります。
しかし、海外研修を通して1日の多くの時間で外国語に触れること、コミュニケーションを取るために必須となる環境に身を置くことで、飛躍的に語学力が伸びる期待もできます。
海外研修中は、同行した日本人ばかりと話すのではなく、積極的に現地の方とコミュニケーションを取る意識を持って臨むのがポイントです。
意味のある海外研修を行うためのコツ
海外研修には膨大な費用や時間がかかることがわかりましたが、得られるものも多く、取り入れるメリットも数多くあります。海外研修をより有意義なものにするためには以下のコツを押さえておきましょう。
・実施目的と目標を設定する
・対象者を選定する
・最適なプログラムを選定する
・研修の効果を測定する
実施目的と目標を設定する
研修が目的ではなく、研修で身につけたスキルを実務に活かすことが重要です。海外研修を行うことが最適な手段であるか検討しましょう。
例えば、実践的なグローバルスキルを身に着けるのが目的であれば、一般的に海外での研修が効果的です。しかし日経が提供するExcedoのように、日本にいながらにしてグローバル人材として必要なスキルが身につくような研修も存在します。
そして海外研修に限らず、研修を計画する際には実施目的と到達目標を明確にしておくことが重要です。目的や目標を設定せずに研修を計画・参加した場合、研修後何を学んだかわからない、大した成果が得られなかったなどということに陥りかねません。
また、研修の目的や目標を設定する際には以下の点に注意しましょう。
・研修の位置付けは明確か
経営戦略に連動させることで、自身のミッションが明確になり研修に対する意欲が出てきやすいでしょう。また、グローバル人材に求める「要件」「数」「時間軸」を具体化し、今回の研修はどの「要件」「数」「時間軸」にアプローチさせるものなのか、位置づけを明確にしましょう。
例えば、以下のように整理しておくと良いでしょう。
対象者を選定する
海外研修は膨大な費用がかかるため、対象者はしっかりと吟味した上で選ぶ必要があります。対象者を選ぶポイントは、企業側の計画や人事采配はもちろん、本人の意欲やキャリアパスへの考え方も非常に重要になってきます。
実際の対象者の選び方は、社員本人が参加を希望する「手上げ式」と企業側が選抜した社員を指名する「指名選抜式」の方法が一般的です。手上げ式では参加者が集まらないこともあるうえに、研修後に実務で活かす機会があるかどうかが重要なため、ある程度企業側が対象者を絞っておくとよいでしょう。
最適なプログラムを選定する
設定した目的や目標に対して最適なプログラムはどれか検討する必要があります。海外研修にもさまざまな形態やプログラムが存在し、内容もかかる費用も大きく異なります。
特に研修の期待効果が業務ニーズにマッチしているか、対象者のレベルに合っているかの観点で最適なプログラムを検討しましょう。
海外に行かなくても現地さながらのスキルを身につけられる研修
日経ビジネススクールが提供する研修プログラム「Excedo(エクセド)」は、日本にいながらにし現地で体験するような様々なシチュエーションを通して実践力を養うことができるプログラムを提供しています。
研修の効果を測定する
研修にただ参加するだけでなく、研修参加後に効果を測定する必要があります。効果を測定しないと、研修後に目標としたスキルを習得できているか、実務に活かして活躍できるかがわからなくなってしまいます。
研修の効果とは、研修の「出席率」や「修了率」ではなく、「スキルの習熟度」や「業務インパクト」などを指します。これらをできるかぎり定量的に測定し、研修前後の変化を明確にしましょう。
研修前後で、スキルチェックテストを行なっておくと定量的に効果測定ができるためおすすめです。
まとめ
今回は海外研修について解説しました。海外研修はグローバル人材を育成する上で、非常に有意義な経験を得られる、大きなメリットがあります。一方、費用や時間が多くかかるため、実施する際には慎重に検討する必要があります。
研修の目的や目標を明確にし、数ある研修形態やプログラムの中から最適な手段を選択し、より効果の高い研修を計画しましょう。