入社前研修の内容と目的は?研修を実施するときの注意点を解説
人財育成のヒント新卒採用では、内定承諾から入社までの期間が空いてしまうケースがほとんどです。入社前研修は、就職までに空いてしまう期間内に実施される施策です。
入社前研修には様々な目的があります。
本記事では、入社前研修の目的から内容、注意点まで解説します。
入社前研修とは
入社前研修とは、新卒採用において内定承諾から入社までの期間に行われる施策です。入社前研修では、実際の業務に必要な資格・スキル、実務体験を会得します。
入社前研修で得られる効果は、以下のとおりです。
・入社前・入社後のギャップを無くせる
・内定辞退を予防できる
入社前研修を実施する時期は決められていませんが、11月以降に行われるのが一般的です。
入社前研修の目的
入社前研修は新たに会社に入ってくる人たちに、会社が求める役割に合わせてスムーズに仕事を始めてもらううえで、不可欠な研修です。入社前の研修対象者の不安を解消します。入社前研修の目的を再確認し、最低限実施すべき内容を把握しておきましょう。
代表的な入社前研修の目的は、以下のとおりです。
・ビジネス情報への感度を高める
・内定者の不安を払拭する
・内定辞退を防止する
・離職を防止する
・同期メンバーと親睦を深める
・基本的なビジネスマナーを教育する
それぞれの目的について、詳しく見ていきましょう。
ビジネス情報への感度を高める
入社前研修を受講することで、ビジネス情報への感度を高め、社会人として活躍する基礎を身につけられます。具体的には、企業や業界の課題やニーズを理解したり、ビジネスの最新動向を把握したりできるようになります。
また、ビジネスマナーやコミュニケーションスキルを学び、学生から社会人へと意識の変換を促します。
内定者の不安を払拭する
入社前研修の目的の一つは、内定者の不安払拭です。初めて社会人として働き始める内定者は「本当にやっていけるのか」と不安に思っているはずです。
入社前研修では、先輩社員と交流を深めたり、実務に触れたりして、働くイメージを醸成します。入社後にどのように働くのかを具体的にイメージできるようにして、内定者の不安を払拭しましょう。
内定辞退を防止する
内定辞退の防止も、入社前研修の目的です。就活生の中には、入社前研修に重きを置いているケースがあります。
入社前研修を通じて適切なフォローができれば、企業に対する信頼感は増します。就活生には内定承諾を辞退する権利があります。内定辞退に至ることがないよう、入社前研修で内定者の信頼感を培いましょう。
離職を防止する
入社前研修には、離職を防止する目的もあります。入社前研修は就職前に、自社の事業内容や社風、人間関係などを把握するために実施されます。
しかし、入社前研修で企業について理解しないまま就職してしまうと「思った仕事内容ではない」「雰囲気が合わない」「条件と違った」など、ギャップを感じて離職につながるおそれがあります。
入社前研修は、実際の働き方などを通じて、就職前と後で違いが生じないようにする効果があります。
同期メンバーと親睦を深める
内定者は「自分以外に就職する人はどんな感じだろうか」と不安や期待を持ちます。社会人生活に飛び込む新卒者にとって、同期メンバーは悩みを分かち合う貴重な存在です。
入社前研修で同期メンバー同士の親睦を深めれば、就職してからも円滑なコミュニケーションを取れるようになります。また、同期メンバー同士の仲が深まることで、入社意欲が高まり、内定辞退を防ぐきっかけにもなるでしょう。
基本的なビジネスマナーを教育する
入社前研修で基本的なビジネスマナーを教育すると、就職後にスムーズな形で実践に移行できます。また、内定者に社会人はどのようにあるべきか、リアルな情報を提供することで、入社後のギャップも解消できるはずです。
内定者としても、入社までの時間を有効的に活用できます。入社前研修で基本的なビジネスマナーを習得できれば、企業・内定者双方にとってメリットがあるでしょう。
入社前研修の実例
入社前研修の実例は、以下のとおりです。
・自己紹介
・企業・業界理解研修
・ビジネスマナー研修
・セルフマネジメント研修
・OAスキル研修
・内定者アルバイト
・ビジネスに関連したゲーム
入社前研修は、内定者の離職率を引き下げるうえで有効な施策です。自社に適した入社前研修を実施することで、最大限の効果を期待できます。
代表的な入社前研修について、見ていきましょう。
自己紹介
入社前研修で一般的なのが、自己紹介です。
自己紹介は、同期メンバーの親睦を深め、先輩社員に認知してもらうのが目的です。自己紹介に当たっては、初対面である点を加味して、楽しくできる施策を取り入れるのがポイントです。
たとえば、いくつかのチームに分かれ、名前順に趣味・目標を伝え、他のメンバーに違う人を紹介するなど、楽しく馴染めるような方法を考えましょう。
企業・業界理解研修
企業・業界理解研修は入社後、取引先と円滑にやり取りし、社内での業務を滞りなく運ぶうえで必須の研修です。
内定者は企業・業界についてある程度の知識はあるものの、その知識はおぼろげで、間違った情報を仕入れている場合もあります。企業・業界理解研修では、正確な情報を言葉で伝えるだけではなく、頭に入りやすいように表や図を利用してわかりやすく説明するようにしましょう。
また、記述形式でどのくらい理解しているかチェックする方法もあげられます。そのうえで、理解できていない箇所を重ねて解説することで、知識の定着を進められます。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修は、以下の内容が一般的です。
・言葉遣い
・挨拶
・話し方
・姿勢
・電話対応
・ビジネスメール
・名刺交換
ビジネスマナー研修では、先輩社員同士で模範演技をするなど、実際のシチュエーションを想定して、わかりやすく伝えます。
また、内定者たちにも実践してもらい、習得した知識を日々の業務における自然な所作(しょさ)として身につけてもらうのも効果的です。
セルフマネジメント研修
セルフマネジメント研修とは、仕事に対して自律的に行動できるように、自分自身を管理する研修です。内定者自身が入社前の目標や、就職後の取り組みなどについて明確な目的を定めます。自己成長が目的です。
セルフマネジメントには、eラーニングを推奨します。eラーニングは、動画や教材を活用して、オンラインで学習する研修形態です。
内定者を毎日会社に集めて研修するのは困難ですが、オンラインによるeラーニングであれば、自主的に学習を進められます。定期的に目標を定め、どのくらい学習できたのかをセルフマネジメントして、入社前から自律的な行動を意識させるようにしましょう。
OAスキル研修
OAスキル研修とは、office Automationを略した言葉で、WordやExcel、PowerPointなど仕事に欠かせないソフトを使ったオフィススキルを身につける研修です。
OAスキル研修では、オフィスシリーズの基本的な操作方法を学びます。内定者はある程度の利用経験はありますが、ビジネスとして本格的に用いた経験は少ないでしょう。
入社前研修で、資料や図・グラフの作成方法を理解していれば、就職後に悩むケースを減らせるはずです。ただし、一度に集約した研修を詰め込むとやる気を削ぐばかりでなく、一通りのスキルをなぞって終わるだけになるかもしれず、非効率です。
OAスキル研修の際には、テーマごとに分けるなどの工夫をしましょう。
内定者アルバイト
入社前研修では、内定者アルバイトもあげられます。通常の研修は、実務に関係するケースはほとんどありません。
しかし、内定者アルバイトは実際の業務をしながら賃金を得ることにより、社会人としてリアルなイメージがつかみやすくなります。
ただし、難しい実務をいきなり始めてしまうと、入社前に挫折するおそれがあります。内定者アルバイトでは、やり切れる実務に限定しましょう。
ビジネスに関連したゲーム
ビジネスに関連したゲームも、入社前研修でのユニークな試みの一つです。ビジネスゲームの目的は、実際の仕事に対するイメージを持ってもらうことです。
ビジネスゲームに関連した代表的なゲームは、以下があげられます。
・ドミノチャレンジ
・The 商社
・マネーファイト
・ワークスタイルトランプ など
近年、入社前研修としてビジネスゲームを取り入れている企業が増えつつあります。楽しみながらビジネスに関して学べ、これからの仕事に期待と好印象を持ちながら入社を迎えられるでしょう。
入社前研修を実施するときの注意点
入社前研修は、ただ実践するのではなく、細心の注意が必要です。以下の注意点を押さえてくれぐれも法に触れないよう。
・入社前研修への参加の義務付けはできない
・研修内容によっては賃金が発生する
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
入社前研修への参加の義務付けはできない
入社前研修は、内定者の就労が開始されていない時期なので、会社側の都合で一方的に義務付けはできません。
もし、入社前研修への参加を強制してしまうと、違法になる可能性があります。入社前研修はあくまでも、内定者の任意であることを理解しておきましょう。
入社前研修に参加していないからといって、入社後の給料に差をつけたり、評価を下げたりするのも違法となります。注意しましょう。
研修内容によっては賃金が発生する
入社前研修内容によっては賃金が発生する点に注意しなくてはいけません。
入社前研修で賃金が発生するときは、強制力があるか否かです。任意参加の研修は、強制力がなく賃金を支払う必要はありません。しかし、一定の時間、一定の場所での作業が必要な場合は、賃金が発生します。
たとえば、実務に携わるアルバイト研修は拘束時間があり、賃金が発生するケースがほとんどです。自己紹介や企業・業界理解研修は、任意参加なので、賃金を支払う義務はありません。
入社前研修で賃金を支払う義務を理解していないと、会社自体に罰則が科される可能性があります。細心の注意を払いましょう。
まとめ
入社前研修は、内定者の辞退や離職を予防するうえで重要な施策です。企業にとっても、就職後すぐに実務へと移行できるメリットがあります。
入社前研修では一般的な施策に加え、すぐに実践できる内容を準備しておいた方がより効果が高まります。
・ラングリット:社会人として知っておくべき経済・ビジネス基礎知識
・伝わる文章力講座:すばやく、簡潔に、要点を伝える文章術を文章のプロ日経記者が指導
・ビジネス雑談力研修:お客様に信頼される対話をするための、インプット+アウトプット力を磨く
入社前研修を入社したその日から活躍できる即戦力の人材の育成につなげるか。
入社前研修の内容にお悩みの企業は、日経ビジネススクールの取り組みを、ぜひご利用いただき、人材の早期育成にお役立てください。