人材育成の現場が抱える課題と解決策とは?ポイントや具体例も紹介
人財育成のヒント企業が経営目標を達成するには、優秀な人材を育成する必要があります。
しかし、「忙しくて人材育成に当てる時間がない」「人材育成のスキルや知識がない」といった課題を多くの企業が抱えています。
本記事では、人材育成の課題について、人材を育成するメリットを確認したうえで、課題解決に必要なポイントを詳しく解説していきます。
効果的な実施手順も一つずつ解説していきます。人材育成について課題を抱える企業のご担当者は、ぜひ参考にしてください。
人材育成とは
組織運営に欠かせない要素として、よく「人(ヒト)、物(モノ)、金(カネ)」と言われます。この3つのうちの1つが欠けても企業が目指す経営戦略は実現できません。物と金を活用して企業の経営戦略を実現に近づけようとする担い手が一般の社員から経営者まで含めた人です。変化の激しい時代を乗り切るには困難に向き合える多様な人材が欠かせません。
企業が経営戦略の実現に向けて、社員の潜在能力を引き出し、一人ひとりの成長を促して、目標を達成しようとする試みが人材育成です。
人材育成に力を入れるメリット
人材育成に力を入れるメリットは、下記の3つです。
・生産性が向上する
・企業の業績が向上する
・社員個人のモチベーションや満足度が向上する
ここからは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
生産性が向上する
人材育成に力を入れて、社員一人ひとりの能力や専門性が高まれば、個々の強みを生かした的確な業務が可能になります。その結果、会社全体の生産性向上につながります。
会社全体の生産性が向上すれば、人件費や固定費などのコストを抑制できます。
近年は、労働人口の減少にともない人手不足に悩む企業が増えています。生産性が高まれば、同じ人数でもアウトプットを増やせます。
企業の業績が向上する
人材育成に力を入れることは、企業の業績向上につながります。
人材育成を通じて社員のスキルや専門性が高まれば、サービスの質や価値も上がります。その結果、顧客満足度も高まり、企業の業績が向上につながる可能性が広がります。
企業の業績が向上すれば、会社の社会的地位も高まります。利益を社員に還元したり、サービスや商品の質向上のために投資できたり、企業にとってより良い循環が生まれるメリットもあります。
社員個人のモチベーションや満足度が向上する
人材育成に力を入れれば、社員一人ひとりのモチベーションアップや、満足度向上にもつながります。
人材育成によって能力やスキルが高まれば、社員の自信ややりがいもアップします。
また、「自分が今どのように行動すべきか」「今後どのように成長していきたいか」が明確になり、働くモチベーションにつながります。
社員の満足度が向上すれば、社員の定着率を高める効果も期待できるでしょう。
人材不足に悩む企業にとって、優秀な社員の離職は大きな損失になります。人材育成によって、社員のモチベーションや満足度を高めて離職を防ぐことは自社にとって非常に重要です。
現場が抱える人材育成の課題と解決策
労働政策研究・研修機構が従業員数5人以上の企業23社に対し、2020年9月時点の状況を尋ねたアンケート調査(有効回収数7,624社)によると、人材育成において現場が抱える以下のような課題が明らかになりました。
・指導する人材が不足している
・人材育成を行う時間がない
・人材を育成しても辞めてしまう
・育成を行うための予算がない
・人材育成の方法がわからない
ここからは、それぞれの課題について、考えられる原因や対策を詳しく解説していきます。
指導する人材が不足している
そもそも現場が人手不足に陥っている可能性もありますが、指導できる適任者の不在は往々にして考えられるケースです。
人材育成についての知識やスキル、ノウハウを持っていない企業は、人材育成を円滑に進められません。
たとえば、育成担当者として社員を客観的に分析できないと、レベル以上の業務を割り当ててしまう可能性があります。社員のレベルに合わせて目標を設定しないと、社員の意欲低下を招きかねません。
自社で社員を育成できる適任者がいない場合は、過去の実例や理論から生まれたフレームワークを活用するのも一法です。ただ、フレームワークはあくまでも思考を整理するツールです。精度の高い人材育成を実施するなら、内部で適任者を見出す一方、外部研修の活用など選択の幅を広げておくべきです。
人材育成を行う時間がない
「人材育成に当てる時間がない」と悩む育成担当者は多いかもしれません。一般的に育成担当者は、通常業務と並行して社員の育成にあたります。
通常業務が忙しくなければ、人材育成にかける時間や労力を確保できますが、余裕がない場合は対象者がなおざりにされる恐れがあります。
人材育成は一過性ではなく、継続的に進めるのが大切です。忙しいからと後回しにしてしまうと、効果が薄れてしまいますし、社員の意欲も下げかねません。
会社側が育成担当者の業務負担をにらみつつ、それによって現場が回らなくなる事態を避けながら、外部研修をの活用などで育成担当者の負担を軽減する配慮も必要です。
人材を育成しても辞めてしまう
人材育成を実施には、手間や時間、費用がかかります。すぐに社員が辞めてしまう状況であれば、どんなに育成に力を入れたとしてもコストが無駄になってしまいます。
人材育成はすぐに結果が出るものではありません。長期間取り組む必要があります。離職率が高い企業の場合は、「コストが無駄になるかもしれない」というリスクを考えて、人材育成に力を入れられないケースもあるかもしれませんが、仕事に前向きな人材が学習機会を得られず、それを不満に離職するなど悪循環に陥る懸念があります。
この課題の場合、社員が仕事に対するやりがいを感じられていない可能性があります。自分の成長を実感できたり、先輩や上司に評価してもらえたりする環境であれば、働く意欲も出てくるでしょう。
社員のモチベーション維持につながるように、こまめなフィードバックや、責任ある業務を任せるのも一つの手法です。社内研修後にはアフターフォローをして、スキルの定着度合をフィードバックすれば、社員の自信にもつながります。
育成を行うための予算がない
人材育成には費用がかかります。予算がない企業は力を入れにくい場合があります。
人材育成の場合は投資効果を事前に算出しづらいという特徴があります。限られた予算の中で実施するとなると、どうしても優先順位が低くなってしまう傾向があります。
対策としては、研修内容や業務マニュアルの見直しをおこない、業務内容に合っていない研修はカットするなど、無駄に費用をかけていないか確認するのも一つです。
また、厚生労働省による『人材開発支援助成金』を活用するのもおすすめです。従業員の人材育成やスキルアップに使える助成金で、訓練経費や訓練期間中の賃金を一部助成してもらえる制度です。
人材育成にかける予算が限られている企業様は検討してみるとよいかもしれません。
人材育成の方法がわからない
「どのように人材を育成すればよいか分からない」など、適切なやり方が分からない場合もあるでしょう。
育成側のスキルが不足していると、行き当たりばったりの指導になってしまいます。
人材育成はただやみくもに進めればいいわけではありません。
精度の高い育成計画を立てて、「なにを」「いつまでに」「どのように」習得すべきかを明確にする必要があります。
しかしながら、計画に対する管理能力が不足していると、非効率で効果も上がりません。
この場合は、フレームワークや外部研修を取り入れると一定の効果が期待できます。
フレームワークを活用すれば、自社において必要な思考が整理でき、人材育成の目標や戦略が立てやすくなります。
外部研修を活用すれば、社内にないスキルや思考方法を効率的かつ効果的に学べます。社内で一から企画する必要がないのも大きなメリットです。
課題を解決する人材育成のポイント
人材育成の課題解決に向け意識したいポイントは、次の3つです。
・立場や個性に合わせて教育する
・モチベーションの維持やアフターフォローも含めて育成する
・外部研修を組み合わせながら教育する
ここからは、3つのポイントについてそれぞれ具体的に解説していきます。
立場や個性に合わせて教育する
人材育成において、立場や個性に合わせた教育が重要です。なぜなら、一人ひとり性格や価値観が違うように、人によってスキルや適性、求めるものが変わってくるからです。人材に応じて育成方法を柔軟に変えていく必要があります。
部下を育成するとなると、上司が後輩を指導するイメージを持つ人もいると思いますが、本質はあくまで部下自身の学びをサポートすることです。適切な指導は必要ですが、部下が主体的に学ぶことが大切です。
具体的には、初めから大きな目標を与えるのではなく、部下の能力に合わせた目標を設定して「どのように行動すれば達成できるか」を一緒に考える必要があります。スモールステップを踏むことで自信につなげ、最終的には部下自身が主体的に学べるように背中を押すのが部下を育成するポイントです。
モチベーションの維持やアフターフォローも含めて育成する
人材育成を成功させるには、社員自身が前向きに取り組む必要があります。
どんなに人事部や育成担当者が力を入れても、一方通行ではうまくいきません。
社員に人材育成の目的やメリットを共有することはもちろんですが、自信につながるようなアフターフォローが欠かせません。たとえば、新入社員のミスや改善点ばかりに目を向けるのではなく、良い部分もしっかり評価して、社員自身が前向きになれるようなフィードバックが重要です。
社員のモチベーション維持や、定期的なアフターフォローも含めての人材育成であることを忘れてはいけません。
外部研修を組み合わせながら教育する
人材育成に手をこまぬいている企業では、「人材育成の方法が分からない」「指導する人材が不足している」「人材を育成する時間がない」などの課題を抱えています。
しかしこれらの課題は、外部研修の活用で解決できる場合があります。
外部研修を活用する一番のメリットは、社内にはないスキルや思考方法を学べる点です。
研修の講師は、さまざまな分野で活躍する経験豊富な専門家が担当します。効率的かつ効果的な人材育成が可能になります。
外部研修を活用すれば、一から研修を企画する必要がなくなるため、育成担当者の負担が軽減できるのもメリットです。
日経ビジネススクールは、年間660社を超える企業様の人材開発を支援しています。
40年に渡るビジネスパーソンの育成実績がある日経だから実現できる、精度の高い人材育成サービスをご提供いたします。
「人材育成をおこなっていても、結果が出ない・・」「どのように人材育成に力を入れればいいか分からない・・」とお悩みの企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
効果の出る人材育成の実施手順
人材育成の際は、以下の4つ手順で進めていくとよいでしょう。
1.社員のスキルを把握する
2.企業が求める人物像と必要スキルを明確にする
3.教育方法を決める
4.効果を測定する
それぞれ詳しく解説していきます。
1.社員のスキルを把握する
まず、現時点で社員が持っているスキルの把握が大切です。
人材育成にあたって、社員の現状を正確に把握しなければ、「どのようなスキルを身につければいいのか」「どのように育成を進めていくべきか」が明確になりません。
社員の現状を理解せずに進めてしまった場合、計画が途中でぶれてしまったり、自社が求める人材とは違う方向に育ってしまったりするリスクも考えられます。
社員が現時点でどのようなスキルを持っていて、不足しているスキルは何かを明確にすることから始めましょう。
社員のスキルを把握するには、「現時点での社員の能力レベル」「ステップアップするのに必要なこと」を整理できる『職業能力評価シート』を活用するのがおすすめです。
2.企業が求める人物像や必要なスキルを明確にする
まず経営者や配属先部署にヒアリングをして、求める人物像や、必要なスキルを情報収集します。
目指す人物像を具体化する際は、以下のポイントから分析するとスムーズです。
・自社で評価されている社員から考えてみる
3.育成方法を決める
社員が持っているスキルを洗い出し、自社が求める人物像、必要なスキルを明確にしたら、具体的な育成方法を決めていきます。
さまざまな育成方法がありますが、どのようなスキルを学びたいかによって適切な育成方法は変わります。
それぞれメリットやデメリットを理解したうえで、自社に合った育成方法を選択するのがよいでしょう。
育成方法は大きく分けて、以下のような方法があります。
・レクリエーション:ゲームを通じてチーム力や問題解決能力などのスキルを習得する方法
・ロールプレイ:実際に起こりうるビジネスシーンを想定してスキルを身につける方法
・OJT:現場経験を通じて知識やスキルを習得する方法
・eラーニング:デジタル機器やインターネットを利用して学習する方法
4.効果を測定する
人材育成は、ただ育成カリキュラムを進めるだけでは効果を得られません。
人材育成の精度を高めるには、必ず効果を測定する必要があります。
その際、数値化できる定量、数値化が難しい定性の基準を設けて、「社員のスキルは向上しているのか」「現場の利益につながっているか」を具体的に見える化することが大切です。
社員へのフィードバックにも力を入れましょう。
大切なのは、社員が自分自身の行動や状況を客観的に振り返る機会を設けることです。
失敗や成功を客観的に振り返ることで、「自分がどのように行動すべきか」が見えてきます。
振り返りの際は、改善点だけでなく良い部分も評価しながら、社員のモチベーションが下がらないように注意しましょう。
まとめ
人材育成の課題について、解決方法やポイントなど解説しました。
人材育成に力を入れることは、個人や組織としてのパフォーマンス向上はもちろん、社員のやりがいにもつながります。
近年は、人材の流動化が進み、人材をどう定着させればよいか悩む企業は増えています。
質の高い人材を育成し、社員一人ひとりが成長ややりがいを実感できれば、人材の定着率向上につながります。
精度の高い人材を育成するには、育成スキルの高い指導者が必要です。
もし、「社員を育成できる人材がいない」「どのように人材育成を進めればよいのか分からない」など、課題を抱えている企業様は外部研修もうまく活用しつつ、効率的かつ効果的な人材育成を目指すのがよいでしょう。