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社員研修とは?プログラムの種類や内容・ポイントを例とともに紹介!

社員研修とは、仕事を遂行するうえで必要なスキルを習得するための研修です。おもに生産性の向上やリスク管理などを目的としています。階層ごとに求められるスキルが異なります。

この記事では、階層別に社員研修プログラムの内容を解説します。あわせて、社員研修のポイントを紹介します。これらを参考に効果的な社員研修を実現しましょう。

社員研修とは

社員研修とは、仕事を遂行するうえで必要なスキルの習得を目的とした学習機会を指します。社員研修のおもな目的として以下の5つがあげられます。

【社員研修の目的】
・生産性の向上
・リスク管理
・企業成長と企業実現
・従業員の満足度や愛着心の向上
・パフォーマンスの向上

社員研修は、組織全体の目標達成や成果向上を目指して個々の社員の能力や生産性の引き上げを目的にしています。

組織が直面するさまざまな問題を解決し、顧客のニーズに応えられる人材の育成も目的の1つといえるでしょう。

社員研修を手厚くすれば、社員はスキルアップを図れるだけでなく、組織の理念やビジョンが浸透し、組織へのロイヤルティー(忠誠心)も高まり、離職率の低下につながる好循環が期待できます。

現代のビジネス環境における社員研修の重要性

変化が激しいビジネス環境において、社員研修は、企業成長や事業の継続性において、重要な役割を担っています。またDX(デジタルトランスフォーメーション)など最新テクノロジーの潮流に乗り遅れることのないよう従来の社員研修とは異なる手法が求められていることも、押さえておかなければなりません。

【社員研修の重要性】
・主体的な学習が必要とされている
・さまざまな研修形態に対応する

主体的な学習が必要とされている

予測困難な時代のなかで、企業成長を持続するには、「主体性のある人材」が必要不可欠です。主体性のある人材とは、自身に求められている役割を的確に見極めて、目標に向かって粘り強く取り組める人を指します。

この主体性を育むには、受講者が自ら考え、学べる仕組み(主体的な学習)づくりが必要とされています。

IT(情報技術)化が進むに連れて、IT人材の確保が難しくなっています。多くの企業は既存の社員に新たなスキルを習得してもらう「リスキング(学び直し)」を重要視しています。

しかし、パーソル総合研究所が公開した「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」によると、東南アジアやインドは、社外学習・自己啓発が活発で自己研鑽に意欲的であるのに対し、日本は「とくに何も行っていない」と回答した人が46.3%で約2人に1人という結果になりました。

日本は世界と比較して学習時間が圧倒的に少なく、習慣が根付いていません。主体的な学びを通じて自らスキルアップを図る思考や行動を促し、習慣化させることが重要です。

さまざまな研修形態に目を向ける

「研修」というと社内の一室に社員を集めて講義・座学をする集合研修をイメージする人が多いのではないでしょうか。

しかし、テレワークの導入や働き方改革の影響もあり、一カ所に複数の社員を集める従来型の研修が困難になり、オンライン研修やeラーニングなどさまざまな研修形態が求められるようになりました。

研修形態の種類と特徴を下記にまとめました。自社に適した手法を組み合わせながら、企業求める人材育成を実現しましょう。

・グループワーク:複数人で成果物を発表するワーク形式
・レクリエーション:従業員同士の交流や、リフレッシュを目的とした社内イベント
・ロールプレイ:業務上の疑似場面を想定し、役割を演じながらスキルを習得する学習方法
・OJT(職場内訓練):上司が部下に対して実務を通じて指導する教育方法
・eラーニング:学習管理システム(LMS)を使用して、学習や研修を行う方法
・オンライン研修:Web会議システムなどを使用して、学習や研修を行う方法

なかでも、グループワークやレクリエーション、ロールプレイは、受講者の参加意欲が高まり、研修を通して主体性を養う好機ともなります。

これからの予測の困難な時代を生き抜くには、他者と協働し、成果を上げる力が必要になってくるとされています。上記のような多彩な研修形式の導入でコミュニケーション能力や協調性の向上を図り、企業成長によい影響をもたらすような取り組みを進めましょう。

【階層別】社員研修プログラムの内容例

一口に「社員研修」といっても、従業員の能力や階層によってそれぞれ実施すべき内容が異なります。ここでは、各階層に応じて導入すべき社員研修プログラムの内容を具体例とともに紹介します。

【社員の階層別研修】
・新入社員・若手社員向け
・中堅社員向け
・管理職向け

新入社員・若手社員向け研修

ここでは、新入社員や若手社員向けに実施する研修のプログラム内容を具体例付きで紹介します。

コンプライアンス研修

コンプライアンス研修とは、従業員が仕事に関連する法律や規制について学ぶ研修です。情報漏えいや下請法違反、著作権・特許権の侵害、ハラスメントといった不祥事の多くは、個々の社員のコンプライアンス意識の低さが原因で発生するケースが大半です。

コンプライアンス研修を定期的に取り入れて、不祥事を未然に防げるよう、コンプライアンス意識を社内全体に浸透させましょう。

コンプライアンス研修は、基本的な知識の習得がおもな目的です。大勢が漏れなく必要な知識を得られるようWeb会議ツールなどを用いたオンラインで実施している企業が増える傾向にあります。

ビジネスマナー研修

ビジネスマナー研修とは、ビジネスパーソンとしてのマナーを身につける研修です。具体的には、挨拶の方法をはじめとして、表情のつくり方や姿勢、臨機応変な応答、好感を持たれる言葉遣いなどを学びます。

ビジネスマナー研修を通じて、社内外にわたって良好な人間関係を構築し、円滑に業務を遂行できるよう支援します。新入社員・若手社員に必須の研修だといえるでしょう。

講義を受けるスタイルの「座学」や、対話型の「ワークショップ」、非対話型の「eラーニング」などさまざまな形態でビジネスマナー研修が導入されています。受け身である・競争心がないといった新入社員が多いなどの課題を抱えている企業は、主体性を高めるグループワークやレクリエーション、ロールプレイの導入が課題解決の糸口になるかもしれません。

セルフマネジメント研修

セルフマネジメント研修とは、従業員が自分自身で目標を設定・管理しながら目標達成に向けて行動する力を養う研修です。学習テーマは、コミュニケーションスキルやストレス管理能力、進捗管理能力など多岐にわたります。

セルフマネジメント研修は、社員一人ひとりが自己管理を徹底し、安定して仕事を遂行できるよう個人の自律を図るのがおもな目的です。講義による基礎知識の習得に加え、演習や個人ワークを導入してセルフマネジメントスキルを高める手法が多くとられています。

キャリア研修

キャリア研修とは、自分の理想とする働き方を実現するのに必要なスキルやプロセスを学習する研修です。キャリア研修では、自分のキャリアを振り返り、強みやスキル、興味・関心を明確化し、自身を客観的に把握できるメリットがあります。

具体的には、自己分析やキャリアプランの作成、キャリアカウンセリングなどを通じて、将来ありたいイメージ像や目標を設定するといった手法を用いる企業が目立ちます。

キャリア研修の受講で、仕事に対するモチベーションが高まり、組織への好影響が期待できます。

中堅社員向け研修

ここでは、中堅社員向けに実施すべき研修のプログラム内容を具体例付きで紹介します。

入社1年目から3年目の新入社員・若手社員とは異なり、ほとんどの業務を一人で遂行できる能力を持っている中堅社員には、より大きな成果が求められます。あわせて、上司と部下の架け橋となる役割を担いながら、組織に貢献する能力が必須となります。研修を取り入れて中堅社員に必要なスキルの向上を図りましょう。

フォロワーシップ研修

フォロワーシップ研修とは、リーダーをサポートしながら、後輩・部下の育成や成長を支援し、組織に貢献する力を身につける研修です。

フォローアップ研修ではおもに、「上司やリーダーと円滑なコミュニケーションをとる」「組織を活性化させる」「リーダーシップの向上を図る」などのテーマを掲げた内容のプログラムが導入されます。

研修形態は、コンテンツで基礎知識を習得する「eラーニング」や「オンライン研修」などで学習を進める場合もあれば「ワークショップ」や「ロールプレイ」によって主体的に行動して、実務で生かせるスキルを身につけるケースもあります。

メンター研修

メンター研修とは、指導役のメンター担当者を対象にした研修です。おもに、メンターの役割や心構えといった基礎的な内容から、指導を受けるメンティの話を聞くスキル(傾聴力・ヒアリング力)や、コーチング、ハラスメントについてまで幅広く学習します。

メンタースキルの向上は、新入社員・若手社員のモチベーション維持や、離職防止につながるだけでなく、メンター自身の成長を促す機会にもなります。

ハラスメント研修

ハラスメント研修では、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、モラルハラスメントなどを防止する研修です。この研修によって、職場全体のリテラシーを高め、ハラスメントが起こらないような組織を構築できます。

2020年6月の「労働施策総合推進法」の改正によって、職場のパワーハラスメント防止措置が事業主に義務づけられ、研修の導入を検討する企業が増えました。

管理職向け研修

ここでは、管理職向けの研修プログラムの内容を具体例付きで紹介します。

次世代リーダー研修

次世代リーダー研修とは、経営幹部候補となる人材を育成する研修です。対象の人材を早期選抜し、研修を通じてリーダーシップや管理能力などの資質やスキルを養います。

次世代リーダー研修では、経営幹部候補となる人材の変革意欲の向上を図ることが大切です。メンタル面のサポートや、受講者に寄り添う「支援者」をアサインすると高い効果が見込めます。

コーチング研修

コーチング研修とは、部下やチームメンバーを育成する力を養う研修です。コーチング研修では、部下を育成できる人材を増やすだけでなく、目標達成や課題解決に向けて、能動的に取り組める人材の育成も目的としています。

傾聴力や質問力、フィードバック力などを鍛えるため、講義以外にもロールプレイやグループワークを取り入れて実施されることが多いです。定期的な研修を設けて、振り返る機会を作ることでスキルが定着しやすくなります。

マネジメント研修

マネジメント研修とは、組織をマネジメントするにあたって必要な専門知識やスキルを習得する研修です。

マネジメント研修ではおもに、問題解決能力やリーダーシップ、コミュニケーションスキル、目標管理・フィードバック、戦略立案、リスク管理などを体系的に学習します。

研修内容の専門性が高く、教育人材のリソース不足が課題となっている企業が多く、外部講師を招いての研修がよい場合が見受けられます。

メンタルヘルス研修

メンタルヘルス研修とは、心の健康を維持し、ストレス耐性を高める研修です。メンタルヘルス研修を受けることで、心身の健康を保ち、仕事に対して意欲的に取り組めるようになります。結果的にパフォーマンスや生産性の向上につながります。

受講者の心身の健康はもちろんのこと、部下や後輩などほかの従業員のストレスやメンタル不調への理解が深まる点もメリットです。ストレス対処法やポジティブシンキングなどの内容を、eラーニングやオンライン研修などの手法を用いて習得する傾向にあります。

社員研修のポイント

効果的な社員研修を実現するには、ポイントを押さえたうえで研修を設計する必要があります。ここでは、社員研修の際に意識すべきポイントを5つ紹介します。事前に把握したうえで、円滑に研修を進めましょう。

【社員研修を実施するときのポイント】
・社員の立場や能力にあわせてカリキュラムを考案する
・長期的に見たカリキュラムを組む
・モチベーションの維持やアフターフォローも重視する
・研修実施後は効果を測定する
・外部研修を活用しながら効率化する

社員の立場や能力にあわせてカリキュラムを考案する

万人に共通する人材育成の方法は存在しません。社員の立場や能力に適したカリキュラムを考案する必要があります。

個々の社員における既存スキルや適性、立場によって求められる要件は異なります。従業員一人ひとりに応じて育成方法もカスタマイズしなければなりません。

例えば、自身の能力からかけ離れたレベルの研修を受けると、スキルアップ以前にモチベーションや学習意欲が低下する恐れがあります。

受講者によってレベル感を合わせて、教育プログラムやメニューを調整すれば効果的にスキルアップを図れます。

長期的に見たカリキュラムを組む

人材育成は、長期的な視野での取り組みが大切です。どんなに優秀な講師を招き入れたとしても、たった1度の研修を受けただけで、スキルや能力を飛躍的に伸ばすことは難しいでしょう。

基本的なルールや知識の習得なら、短期間の研修でも身につきますが、実践的なスキルや難易度の高い専門知識を磨くのであれば、長期プログラムを組んで定着させることが大切です。

モチベーションの維持やアフターフォローも重視する

従業員のモチベーションの維持や、アフターフォローは、社員研修の成否を左右する重要な要素です。従業員が社員研修に対して、少しでも「やらされている」と感じてしまうと、受講する意味を見出せなくなります。次第にモチベーションが低下し、研修内容が定着しにくくなります。

従業員のモチベーションを維持するには、なぜ研修を行うのか、個々の社員に対し、何を期待しているのかを正確に伝えることが大切です。

また、研修を実施したことに満足するのではなく、定着度合いを重視し、研修後もフォローしていく必要があります。

研修実施後は効果を測定する

研修実施後は、効果を測定し、社員の振り返りを促すことが大切です。効果測定では、社員研修がスキルや能力の習得・意識や態度、行動などの変容に貢献したのかを評価できます。

研修で得た知識やスキルを実務に落とし込めているかまで評価しましょう。研修を継続するか否かを判断できたり、評価した結果をもとにプログラム内容を改善したりすることができます。それらのデータは企業に蓄積されて貴重な情報資源となります。

外部研修を活用しながら効率化する

社員研修は、教育者の選出やプログラムの考案から作成、実施するまでに多くのリソースを使うことになります。「アフターフォローにまで目を配れない」「そもそも教育できる人材がいない」という課題を抱えている企業も多数あります。内部の負担軽減で外部研修も活用しながら効率化を図りましょう。

外部研修ならその分野に精通した専門家から、トレンドを押さえたタイムリーな指導を受けられます。ほかにも、外部研修を導入すると、以下のようなメリットが期待できます。

・開催準備の手間を省ける
・専門的なスキルを身につけられる
・業務を離れて学べリフレッシュにつながる
・備品をレンタルできる

変化が激しい現代では、より専門的かつ能動的な能力が必要になります。外部の専門家にスキルアップを託した方が組織力の向上によい影響があるケースは多いです。

日本経済新聞社が運営する人材育成サービス「日経ビジネススクール」では、日本経済新聞社の知見とネットワークを駆使し、さまざまなジャンルの育成プログラムを展開しています。

講師陣には、経営コンサルタントや弁護士、公認会計士、大学教授、実務家など各分野の第一人者を招き、500以上の講座を提供しています。企業の風土や求めるスキルに適した教育プログラムの導入が可能です。

まとめ

社員研修による個々の社員のスキルアップを通じて、組織全体の生産性や成果の向上を達成できます。

社員研修は、階層や必要なスキルに応じて実施すべき内容・プログラムが異なります。適切な手法での導入が求められます。

日経ビジネススクールを活用すれば、500以上の講座のなかから、組織や個々の社員に適したプログラムを選択できます。組織力の向上にお役立てください。

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