タレントマネジメントとは?必要性や導入手順、注意点をわかりやすく解説
人財育成のヒントタレントマネジメントとは、従業員の一人ひとりが持つスキルや知識、経験などの情報を、育成・採用・配置に活用して、社員と組織の成長を促すマネジメント方法です。
近年の日本は、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)、働き方改革などの促進により、ビジネス市場は急速に変化しており、タレントマネジメントが重要視されています。しかし、タレントマネジメントの重要性に気づいていない企業も少なくありません。
そこで本記事では、タレントマネジメントとは何か、注目されている背景、導入のメリット・デメリット、手順などについて詳しく解説します。タレントマネジメントを理解し、従業員・企業の成長へとつなげたい会社は、ぜひご一読ください。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、従業員の一人ひとりが持つスキルや知識、経験などの情報を、育成・採用・配置に活用して、社員と組織の成長を促すマネジメント方法です。
タレントマネジメントは、人材に関わる全従業員が対象です。
元々はアメリカで提唱され、欧米中心に広がっていました。経営戦略の実現に向け、日本でも採用する企業が増えてきました。
タレントマネジメントが注目される背景
タレントマネジメントがなぜここまで注目されているのでしょう。注目される背景を知り、ビジネス環境の動向から必要とされている事情を深く理解できれば、自社への適否を正しく判断できるようになります。
タレントマネジメントが注目される背景は、以下のとおりです。
・労働人口が減少している
・働き方が多様化している
・グローバル競争に打ち勝つのに必要
・業務が細分化・複雑化している(マネジメントの難易度があがっている)
・社内の有用リソースを活用する
それぞれの背景について、詳しく解説していきます。
人材の質が経営に直結するようになってきた
タレントマネジメントが注目される背景の一つには、人材の質が経営に直結するようになっている事情があります。
中小企業庁が調査した「中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍」では、以下のような数値を発表しています。
中小企業庁の調査結果から見ると、企業が抱える問題の1位は「求める質の高い人材がいない」となっています。
企業が求める質の高い人材を育成するには、タレントマネジメントがポイントになります。
労働人口が減少している
労働人口の減少も、タレントマネジメントが注目される背景の一つです。
総務省が調査した「情報通信白書刊行から50年〜ICTとデジタル経済の変遷」では、以下の数値が公表されています。
総務省の調査結果のとおり、近年の日本は75歳以上の高齢者が増え、労働人口が減少しています。労働人口が減少すると、一人あたりの生産性を上げなければ企業の成長は難しくなります。
タレントマネジメントが注目されてる背景です。
働き方が多様化している
働き方が多様化した背景の一つに、新型コロナウイルスによる在宅ワークの広まりがあります。企業は、自宅でも仕事ができると判断して、さまざまな働き方を模索するようになりました。
働き方の多様化とは、在宅ワークや時短勤務、フレックスタイム制度などが挙げられます。
たとえば、労働人口の減少により、育児をしながら働き続ける必要がある家庭も増えています。しかし、100%業務に集中できる環境とは限りません。一人あたりの生産性が落ちてしまうかもしれません。
このような状況を改善するには、タレントマネジメントが必要です。企業は時短勤務などの導入により働き方の多様化を推進しています。
グローバル競争に打ち勝つのに必要
グローバル競争に打ち勝つ必要があるのも、タレントマネジメントが注目される背景の一つです。急速なビジネス市場の変化によって、継続的なスキル、知識の向上が不可欠になりました。
AIやDX、IT(情報技術)の進化は日進月歩です。グローバル競争を乗り切るには従業員一人ひとりが常に必要なスキル、知識を身につけ競合他社に伍していかなければなりません。
タレントマネジメントは、グローバル競争に打ち勝つうえで必須です。
業務が細分化・複雑化している(マネジメントの難易度があがっている)
近年、多様な働き方によって、業務の細分化・複雑化が起きています。今までの日本は、企業に出社をして働く状況が一般的で、管理は比較的容易でした。しかし、時短勤務や在宅ワークの導入によって、管理者側の負担が増えているのも事実です。
より状況に応じて適切なマネジメントが求められます。複雑化する職場環境に適応した働き方を定着させる手法として、タレントマネジメントに企業は注目しています。
社内の有用リソースを活用する
タレントマネジメントが注目される最後の理由は、社内の有用リソースの活用です。
労働人口の減少によって、新卒・中途における人材確保が難しくなってきました。人材採用問題を解決するには、社内の有用リソースの活用が必要です。
たとえば、人数を増やして売り上げを伸ばすのではなく、従業員を各々、が得意な分野などに配置する適材適所で活躍を促すことで、一人あたりの生産性を上げようという方法です。
タレントマネジメントによって必要な個所にリソースを割ければ、会社全体の生産性も上がっていくでしょう。
タレントマネジメントを導入する目的
タレントマネジメントを導入する目的は、経営目標の達成です。
経営目標を達成するには、企業の成長を実現できる人材が必要です。そのためには「人材調達」「人材定着」「人材育成」「適材適所への配置」が欠かせません。
どれか一つでも欠ければ、企業を成長させるリーダーの育成はおぼつかなくなります。
タレントマネジメントを導入するメリット
タレントマネジメントを導入するメリットは、以下のとおりです。
・組織として強くなる
・従業員を適材適所に配置できる
・従業員の潜在スキルを発見できる
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
人・組織に関わる課題が見えてくる
タレントマネジメントを導入するメリットの一つは、人・組織に関わる課題が見えてくる点です。タレントマネジメントでは、従業員一人ひとりのスキルや知識、経験を棚卸します。何を身につけるべきか明確になります。
たとえば、IT技術に特化した従業員でも、コミュニケーション能力が欠落している可能性があります。コミュニケーション能力を改善できれば、いままでのスキルを生かしながら新規顧客を獲得できるかもしれません。
人・組織に関わる課題が見えてくるのは、タレントマネジメントを導入するメリットです。
組織として強くなる
組織として強くなる点も、タレントマネジメントを導入するメリットです。
強い組織とは、従業員が自分の力を一番発揮できる仕事に就いている企業です。営業力に優れている人が、事務作業に従事していては宝の持ち腐れになってしまいます。
タレントマネジメントを導入し、従業員一人ひとりの強みや弱みを明確にできれば、より適したポジションに就けられ、組織として強くなれるでしょう。
従業員を適材適所に配置できる
タレントマネジメントを導入すれば、従業員を適材適所に配置できます。その理由は、従業員のスキルや経験、強みが明らかになるからです。
従業員の中には、適した仕事ができていないときもあります。たとえば、傾聴力に長けている場合は、クライアントのニーズを深掘りする仕事が向いている可能性があります。
しかし、プログラミングなどの技術職に就いていると、強みを生かせません。タレントマネジメントでは、合わせて業務の見直しもして、従業員を適した仕事に配置できるようになります。
従業員の潜在スキルを発見できる
タレントマネジメントによって従業員の潜在スキルを発見できるようになります。いままでの経験やスキルを洗い出しが新たな表現につながるからです。
企業内では、従業員同士が一人ひとりのスキルや知識を把握しているとは限りません。人事担当者であっても、すべてを把握するのは困難です。従業員自身が気づいていない場合もあります。
たとえば、タレントマネジメントを全社員に導入すれば、自身の深掘りで、潜在スキルの発見につながるかもしれません。組織全体で取り組めば、一人ひとりと向き合える時間が増え、潜在スキルの発掘の機会が増えるでしょう。
結果的に、従業員を成長させる取り組みにつながり、企業として成長ができます。
タレントマネジメントを導入するデメリット
タレントマネジメントを導入する際には、以下のようなデメリットがあることは留意しておきましょう。
・情報収集・管理に手間がかかる
・システムの導入が必要(コスト:金銭+人的)
タレントマネジメントの導入は、メリットだけではありません。デメリット・メリットを理解し、総合的に判断をしたうえで、タレントマネジメントの導入を検討しましょう。
従業員の理解を得る必要がある
タレントマネジメントを導入する際には、従業員の理解を得る必要があります。タレントマネジメントは、企業側が勝手に実施していい施策ではありません。タレントマネジメントの導入は、従業員がいて始まります。
理解を得られない場合、社内だけでなく、口コミや評判で「無理やり仕事を押しつける」などの悪いイメージが広がります。悪いイメージが広がれば、応募する人材や取引先が減少してしまうおそれがあります。
タレントマネジメント導入の際は、従業員の理解を得てから実施しましょう。
情報収集・管理に手間がかかる
情報収集・管理に手間がかかる点も、タレントマネジメントを導入するデメリットです。
たとえば、タレントマネジメントを実施すれば、従業員一人ひとりのスキルや知識を調査し、データベース化する必要があります。社員の人数にもよりますが、全従業員を対象にすると、膨大な時間が掛かります。
タレントマネジメントを導入する際は、統計データを一元化できるシステムや質問する内容を決めておくなど入念に事前準備をしましょう。
システムの導入が必須(コスト:金銭+人的)
タレントマネジメントの導入には、システムの構築が必要です。タレントマネジメントシステムは、従業員一人ひとりのデータを一元管理し、いつでも自由に取り出せるのが特徴です。
しかし、タレントマネジメントシステムの導入には、金銭・人的コストが発生します。システム構築にあたっては複数社から見積りをもらうようにしましょう。
タレントマネジメントを導入する手順
タレントマネジメントを導入する手順は、以下のとおりです。
2.タレントマネジメントシステムを選定する
3.自社のすべての人材情報を把握する
4.システムに情報を流し込む
5.足りないデータを洗い出す
6.データを取得する
7.施策を実行する、PDCAを回す
それぞれの詳しい手順について解説していきます。
①目的を設定する
タレントマネジメントを導入するときは、まず目的を設定しましょう。目的を設定しないと、タレントマネジメントの意味合いがなくなります。
目的を設定するときは、3年・5年・10年のように、中長期的な経営戦略をもとに決めるのがポイントです。
②タレントマネジメントシステムを選定する
目的を設定した後は、タレントマネジメントシステムを選定します。選定する際のポイントは、以下のとおりです。
・必要な機能が備わっているか
自社で活用したいシステムが備わっていないと、購入しても使い道がありません。デフォルトで搭載されている機能や、オプションで追加が必要な機能を確認しましょう。
・操作を直感的にできるか
タレントマネジメントシステムを利用する従業員が、簡単に使えるかどうかは、社内に浸透させるうえで重要です。マニュアルなどを確認すれば誰でも活用できるか、客観的な視点で考えましょう。
・他システムと連携できるか
自社で活用済みの採用管理システムや労務管理システム、人事システムなどと、タレントマネジメントシステムが連携できるかを確認しておきましょう。
タレントマネジメントシステムの導入では、すぐに購入するのではなく、無料トライアルを利用するのがおすすめです。
③自社のすべての人材情報を把握する
タレントマネジメントを成功させるには、従業員一人ひとりの人材情報を把握する必要があります。具体的には、以下の情報を集めます。
・学歴
・資格・スキル
・部署
・関わっているプロジェクト
・評価結果 など
人材情報が明確になれば、次の課題が見えてくるでしょう。
④システムに情報を流し込む
人材情報を把握できた後は、タレントマネジメントのデータベースに流し込みます。手順は、以下のとおりです。
2.人材情報
3.採用・育成計画
4.従業員の配置
タレントマネジメントに必要な情報を、すべて流し込むようにしましょう。
⑤足りないデータを洗い出す
システムに情報を流し込み、採用や配置転換の後は、成果を評価します。
目的に対してどのくらい達成できたのかを情報と照らし合わせ、足りないデータを洗い出します。
⑥データを取得する
足りないデータを具体的に取得します。営業スキルやIT技術、コミュニケーション能力など、どのようなデータが必要なのか、より具体的に取得しましょう。
得たデータをもとに、改善・実行を行います。
⑦施策を実行する、PDCAを回す
ひととおりの施策を実行した後は、総合的な評価をしてPDCAを再度回します。PDCAを繰り返すことで、成長が終わらず、常に新しいスキル・知識を習得できます。
一次のタレントマネジメントで満足するのではなく、継続することで、自社が求める人材を育成できるでしょう。
タレントマネジメントを導入する際の注意点
タレントマネジメントを導入する際は、手段の目的化を防ぎましょう。
タレントマネジメントは、目標を達成する手段を明確にし、実施することが目的です。しかし、手段を決めて終わってしまっては、導入した意味がありません。
手段の目的化を防止するには、サポート体制の整備が重要です。手段を決めて後は従業員に任せるような取り組みにしてしまうと、無法地帯となってしまいます。
先輩社員がフォローに入ることで、手段の目的化を防げるでしょう。
タレントマネジメントに資格は必要?
タレントマネジメントに資格は必要ありません。しかし、タレントマネジメントを実施する際に持っておくとよいスキル・知識は、以下のとおりです。
・計画・思考力
・状況把握能力
・決定力
・コミュニケーション能力
・論理的思考力
・否定的思考力
タレントマネジメントは、目標から何が必要で、どのような活動をすればいいのか見極める必要があります。以上のスキル、知識を持っておくと、スムーズに活動できます。
まとめ
タレントマネジメントは、企業を成長させるうえで欠かせない施策です。従業員の一人ひとりがスキルアップできれば、強い企業として活動できるようになるでしょう。しかし、タレントマネジメントで必要なスキル・知識が明確になったものの、どのような教材を通じて学べばいいか悩む企業もあるはずです。