日経HCラボNIKKEI
Human Capital Lab

日経視点の調査レポート、コラム、
セミナーで
人的資本経営に伴走します

企業内大学の具体的な作り方を8つのSTEPで解説|メリットと注意すべきデメリット

人材育成に力を入れている企業が設立する「企業内大学」が注目されています。企業内大学は、社員の成長と企業の発展に貢献する有効な手段です。アメリカの主要企業からはじまり、近年、多くの企業が企業内大学の導入を検討しており、今後もその普及が進むと考えられます。

本記事では、企業内大学の概要と設立のメリットやポイント、一般的な社内研修との違いを解説します。

企業内大学とは

企業内大学とは、企業が社内に設置している研修制度の一種であり、大学のように複数の講座を社員が受講できる形態を指します。なお「大学」という名称を用いていますが、法令で規定される教育施設ではなく、公的に認められた大学ではありません。

英語では一般的に「corporate university(コーポレート・ユニバーシティ)」と呼ばれます。また、「corporate institute(コーポレート・インスティテュート)」「corporate academy(コーポレート・アカデミー)」と呼ばれることもあります。

「corporate institute」は、企業内大学が提供する教育が、大学や研究所に近い内容であることを強調する名称です。そして、「corporate academy」は、企業内大学が提供する教育が、社員の能力向上とキャリアアップを支援する施設であることを強調する名称となります。

企業内大学の代表例

アメリカでの企業内大学の代表例は、1956年にゼネラル・エレクトリック(GE)社が開設した「ジョン・F・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所(通称:クロトンビル)」です。クロトンビルは、組織マネジメントの習得を目的とした企業内ビジネススクールです。ここでのリーダー育成モデルがきっかけとなり、アメリカ全土に企業内大学が広まっていきました。

日本では、1971年に日本マクドナルドが設立した「ハンバーガー大学」が有名です。ハンバーガー大学は、マクドナルド独自の教育カリキュラムに基づいて、新入社員からマネジャーまで、すべての社員に教育を提供しています。

企業内大学を設立する目的

人的資本経営を目指す現在、企業内大学を設立する目的は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。

社員の能力向上と知識獲得を促進する

人的資本経営では、人材を企業経営に欠かせない資本として捉え、その価値を最大限に引き出そうと試みます。企業内大学では、社員のニーズやスキルレベルに合わせて、多様な教育プログラムを提供し、社員の能力向上と知識獲得を促進します。これにより、企業は、変化に対応できる人材を育成し、持続的な成長の実現を目指します。

社員のエンゲージメントとモチベーションを向上させる

人的資本経営では、社員のエンゲージメントとモチベーションの向上が重要です。企業内大学では、社員が自ら学び成長できる環境を提供することで、社員のエンゲージメントとモチベーションの向上につなげます。これにより、企業は、優秀な人材の流出を防ぎ、企業価値の向上を図ることができます。

企業の競争力を強化する

人的資本経営は、企業の競争力の強化にもつながります。企業内大学を活用することで、企業は、変化に対応できる人材を育成し、持続的な成長を実現することが可能です。これにより、競合他社との差別化を図り、市場での優位性を獲得できるでしょう。

以前のように大量に採用した人材の中から優秀な人材を育てる手法は、もはや困難な時代になりました。そこで、企業外から優秀な人材を確保するのではなく、企業内大学を設置し企業内で有能な人材を育成する方法が注目されています。企業内大学は、人的資本経営において重要な役割を果たす存在で、今後も、企業内大学の導入が進むと考えられます。

企業内大学と研修の違い

企業における学びというと、一般的には社内研修を思い浮かべる人も多いでしょう。ここでは、企業内大学と社内研修との3つの相違点を解説します。

目的

社内研修と企業内大学では、目的が異なります。

社内研修は、業務に必要なスキルや知識の習得を目的としています。これに対し、企業内大学は、社員の能力向上とキャリアアップを目的としています。

講師

企業内大学の講師と研修の講師の違いは、大きく分けて以下の2つが挙げられます。

講師の役割の違い

企業内大学の講師は、社員の能力向上とキャリアアップを支援する役割を担うのに対し、研修の講師は、業務に必要なスキルや知識の習得を後押しする役割を担います。企業内大学の講師は、社員のニーズやスキルレベルに合わせて、最適な教育プログラムを提供する必要があります。また、社員の自主的な学習意欲を促進し、キャリアアップを支援する役割も担います。

一方、社内研修の講師は、業務に必要なスキルや知識の効率的な習得を指導する役割が求められます。また、受講者が理解できるように、わかりやすく説明する技量が不可欠です。

講師の選定方法の違い

企業内大学の講師には、外部講師のみならず、社内の優秀社員が選ばれる場合があります。業務遂行に直結する現場で培った知識や技術を実践的に学べます。研修の講師は、外部の専門家を招くのが一般的です。自社のニーズに合わせてカスタマイズする場合、費用が高額になる懸念があります。

企業内大学の講師を自社の社員から選べば、社内の業務や文化を理解しており自社に適切なプログラムを組めます。また、外部の専門家から選ぶ場合は、特定分野の専門知識や経験がカギとなります。

講義内容

企業内大学と研修は、いずれも社員の成長を促す手段ですが、目的や対象層が異なります。求められる講義内容も異なります。企業内大学の講義は、全社員が対象で、派遣社員やパートも含めた全社員に学びの機会を与え、企業理念の浸透を図ります。会社全体の底上げが目的となります。一方、研修の講義は、新入社員や特定の職種・役職の社員を対象とします。時機に応じた即戦力の育成が主眼となります。

企業内大学の講義は、社員のニーズやスキルレベルに合わせて、多様な内容の提供が求められます。一方、研修の講義は、業務に必要なスキルや知識の効率的な習得が求められます。特定の職種や役職を対象とした講義が中心となります。

具体的な講義内容の例としては、以下のようなものが挙げられます。

・企業内大学

・一般的な研修

企業内大学と研修の組み合わせで、社員の成長をより効果的に支援できます。

例えば、新入社員研修でビジネスマナーやITスキルを習得した後、企業内大学でリーダーシップ研修やキャリア開発研修を受講することで、より幅広いスキルや知識が身につくだけでなく、中長期にわたり個人の活躍を促すキャリア自律の機会が生まれ、モチベーションが高まります。

企業内大学の作り方

それでは、企業内大学の作り方を確認していきましょう。

1.企業内大学のパターンを知る
2.育成すべき人材要件を決める(コンセプト作り)
3.コンセプトに合わせた人材像の明確化
4.職務や能力の定義
5.年間計画、KPIの設定
6.カリキュラムを設計
7.各種プログラムの企画設定

①企業内大学のパターンを知る

企業内大学のパターンは、対象や目的によって4つのタイプに分けられます。

・対象

全階層:全社員を対象とする

特定階層:特定の職種や役職の社員を対象とする

・目的

スキル習得:特定のスキルや知識を習得する

理念共有:企業のビジョンやミッションなど、理念を共有する

この2つの軸を交差させて、以下の4つのタイプに分けられます。

②育成すべき人材の要件を決める(コンセプト作り)

企業内大学を設立する際には、まず 「どのような人材を育成したいのか」のコンセプトを明確にする必要があります。

コンセプトを明確にして、企業内大学の目的や目標を定め、それに沿ったカリキュラムやプログラムを設計します。

コンセプトを策定する際には、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

・企業の経営戦略や事業戦略を踏まえる

企業内大学は、企業の経営戦略や事業戦略の実現が大きな目標です。社員の能力向上とキャリアアップの支援はその第一歩です。そのため、企業の経営戦略や事業戦略を踏まえて、どのような人材を育成したいのかを検討する必要があります。

・社員のニーズやスキルレベルを把握する

企業内大学は、社員のニーズやスキルレベルに合わせたカリキュラムやプログラムを提供します。そのため、社員のニーズやスキルレベルを把握して、それらを満たすコンセプトを策定する必要があります。

・競合他社との差別化を図る

企業内大学は、競合他社との差別化を図る重要な施策です。そのため、競合他社にはない独自性のあるコンセプトを創意工夫するよう努めましょう。

企業内大学のコンセプト例としては、以下のようなものが挙げられます。

・「変化に対応できる人材」を育成する
・「グローバルに活躍できる人材」を育成する
・「創造力豊かな人材」を育成する
・「自ら学び成長できる人材」を育成する

企業内大学のコンセプトを策定する際には、これらのポイントを押さえて、自社に最適な人材要件を検討しましょう。

③コンセプトに合わせた人材像の明確化

企業内大学のコンセプトを策定した後は、そのコンセプトに沿った人材像を明確化する必要があります。人材像が明確になれば、カリキュラムやプログラムの設計により正確に反映することができます。

人材像を明確にする際には、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

・コンセプトを具体化する

コンセプトを具体化することで、どのようなスキルや知識を身につけた人材を育成したいのかを明確にできます。

・社員のニーズやスキルレベルを踏まえる

社員のニーズやスキルレベルを踏まえたうえで、現実的に実現可能な人材像を設定します。

・競合他社との差別化を図る

競合他社との差別化を図ることで、自社ならではの強みや魅力をアピールできます。

前述②のコンセプトに合わせた人材像例としては、以下のようなものが挙げられます。

・「変化に対応できる人材」:変化を恐れず、自ら学び成長できる人材
・「グローバルに活躍できる人材」:多様な文化や価値観を理解し、グローバルに活躍できる人材
・「創造力豊かな人材」:新しいアイデアを生み出し、実現できる人材
・「自ら学び成長できる人材」:自ら学び成長し、自己実現を図る人材

④職務や能力の定義

人材像が明確にできたら、職務や能力を定義していきます。

職務や能力を定義する必要がある理由は、以下のとおりです。

・企業内大学の目的や目標を達成する

企業内大学は、社員の能力向上とキャリアアップを支援する狙いで設立されます。そのため、企業内大学の目的や目標を達成に必要な職務や能力を定義する必要があります。

・カリキュラムやプログラムを設計する

職務や能力を定義することで、社員が身につけるべきスキルや知識を明確化できます。これにより、カリキュラムやプログラムのより効果的な設計が可能になります。

・社員のスキルや知識を棚卸しする

職務や能力を定義することで、社員が現在どのようなスキルや知識を身につけているのかを把握できます。これにより、社員のニーズや課題を理解し、適切な教育プログラムの提供に役立ちます。

・社員の評価や昇進の基準を明確にする

職務や能力を定義することで、社員の評価や昇進の基準を明確にできます。これにより、社員のモチベーションを高め、公平な評価や昇進の実現に役立ちます。

職務や能力を定義することで、企業内大学をより効果的に運営できます。社員の能力向上とキャリアアップの支援にもつながります。

⑤年間計画、KPIの設定

企業内大学の目標を達成するために、年間計画とKPIを設定します。年間計画とKPIを設定することで、企業内大学の成果を測定できます。

年間計画とは、企業内大学の目標達成に向け、1年間の具体的な取り組みをまとめたものです。

KPIとは、企業内大学の目標達成に向けた、測定可能な指標です。Key Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標とも呼ばれます。企業や組織の目標を達成のうえで、その進捗状況を測定・評価する指標のことです。

KPIは、以下の3つの条件を満たす必要があります。

・重要性:企業や組織の目標を達成するために重要
・測定可能性:定量的に測定が可能
・目標設定可能性:目標値を設定できる

企業内大学のKPIの具体例としては、以下のような指標が挙げられます。

・受講者数

企業内大学の受講者数は、企業内大学の認知度や関心度を測る指標として有効です。受講者数が増えれば、企業内大学の成果をより多くの社員にアピールできます。

・受講者の満足度

受講者の満足度は、企業内大学の質を測る指標として有効です。受講者の満足度を高めることで、社員の学習意欲の向上が図れます。

・社員のスキルレベルの向上

社員のスキルレベルの向上は、企業内大学の成果を測る最も重要な指標です。社員のスキルレベルの向上で、企業の競争力を高めることができます。

・社員のパフォーマンスの向上

社員のパフォーマンスの向上は、企業内大学の成果を測る指標として有効です。社員のパフォーマンスの向上で、企業収益の拡大につなげることができます。

KPIを定期的に見直して、企業内大学の成果をより効果的に測定・評価しましょう。

⑥カリキュラムを設計する

人材像や職務・能力を踏まえて、カリキュラムを設計します。カリキュラムは、社員のニーズやスキルレベルに合わせて、多様な内容を用意します。

カリキュラム設計のポイント

カリキュラム設計のポイントは、以下のとおりです。

・企業内大学の目標や目的を明確にする

カリキュラムは、企業内大学の目標や目的の達成を念頭に設計する必要があります。企業内大学の目標や目的の明確化で、必要なコースを絞り込めます。

・社員のニーズやスキルレベルを把握する

社員のニーズやスキルレベルを把握し、社員が本当に必要とするコースを設計します。社員のニーズやスキルレベルの把握には、社内アンケートやヒアリングなどを実施するとよいでしょう。

・コースの目的や内容を明確にする

各コースの目的や内容を明確にして、社員が受講すべきコースの判断が容易になります。コースの目的や内容を明確にして、コースのゴールや学習内容を具体的に設定しましょう。

・コースを体系化する

コースの体系化で、社員が学習を継続しやすくなります。コースを職種やスキルレベル、テーマなどに基づいて分類して体系化を進めましょう。

・定期的に見直す

企業内大学の目標や目的、社員のニーズやスキルレベルは、常に変化しています。そのため、カリキュラムは定期的に見直し、必要に応じてコースを追加したり削除したりする必要があります。

カリキュラム設計の注意点

カリキュラムを設計する際は、以下の点に注意が必要です。

・闇雲にコースを増やさない

コースが増えれば増えるほど、社員が学習する時間や労力が分散され、学習効果が低下するおそれがあります。また、受講者のモチベーションが低下する、運営コストがかかるなどのデメリットもあります。

・受講者のニーズを満たす

社員が本当に必要とするコースを設計することで、はじめて受講者の満足度が高まり、学習効果が向上します。

・学習効果を検証する

カリキュラムの設計後、定期的に学習効果を検証し、必要に応じて改善します。学習効果を検証するには、アンケートやテストなどの手段を活用します。

⑦各研修プログラムの企画設計

企業内大学の各種プログラムを企画・設計する際には、まず受講形式がポイントになります。受講形式によって、学習効果や受講者の満足度は大きく異なります。

また、各種プログラムを効果的に運用するためには、運用体制の整備が重要です。運用体制の整備により、プログラムの運営は円滑化し、学習効果の向上が見込めます。

受講形式を決める

企業内大学の各種プログラムにおいて、さまざまな受講形式を用意します。

その理由は、以下のとおりです。

・受講者のニーズや好みに合わせる

学習スタイルや時間の使い方など、社員一人ひとりに異なるニーズや好みがあります。さまざまな受講形式を用意していれば、それぞれのニーズや好みに合わせた研修で学習効果の向上ができます。

例えば、忙しい人でも自分に合った時間・方法を選べます。介護や育児で在宅を望む人、出張先ホテルから受講を望む人などその人に合った方法を選択できます。

・学習効果を高める

受講形式によって、学習効果が大きく異なります。学習内容や目的に合わせて、最適な受講形式を選択することで、学習効果を高められます。

・コストを抑える

受講形式によって、コストが異なります。予算に合わせて、コストを抑えられる受講形式を選択することで、コスト抑制が可能です。

受講形式の組み合わせで、学習効果を高めることもできます。例えば、集合研修で基礎的な知識やスキルを身につけた後、eラーニングで実践的な知識やスキルを身につけるなど、受講形式の組み合わせで、より効果的に学習ができるでしょう。

運用体制を整備する

運用体制は、企業内大学の規模や内容によって異なります。ここでは、一般的な運用体制の例をご紹介します。

・事務局・教育担当のスタッフ

事務局・教育担当のスタッフは、プログラムの企画・設計、運営、評価などを担当します。

事務局・教育担当のスタッフは、以下のスキルや経験を有している必要があります。

・教育に関する知識や経験
・プログラムの企画・設計・運営・評価に関するスキル
・コミュニケーション能力
・リーダーシップ

企業内大学の設置で社内の仕組みづくり、講座の管理や受講者の受講履歴・学習進捗の運営管理も必要です。

・講師陣

講師陣は、プログラムの講義や実習を担当します。講師陣の質によって、プログラムの質や学習効果が大きく左右されます。

講師陣は、以下のスキルや経験を有している必要があります。

・専門知識やスキル
・教育に関する知識や経験
・コミュニケーション能力
・指導力

講師陣は、社内外から選定できます。社内から選定する場合は、社員のスキルや経験を生かせます。社外から選定する場合は、業界や専門分野の最新の知識やスキルを有した講師の招致が可能です。

また、経営陣が講師として登壇し、自社の理念や将来のビジョンを踏まえた教育をすれば、より自社が求める次世代リーダーの育成につながります。

・コンテンツの管理

コンテンツは、プログラムの質を左右する重要な要素です。コンテンツは、以下の点に注意して管理する必要があります。

・最新の情報を反映させる
・学習効果を高める
・わかりやすく簡潔に

シラバス(講義の計画と内容を解説したもの。講義概要)や学び方のガイドブックなどを作成し、受講者がモチベーション高く取り組めるよう管理していきます。

・効果測定

プログラムの効果を測定し、プログラムの改善につなげます。効果測定には、以下の方法があります。

・アンケート:受講者の満足度や学習効果を測定
・テスト:受講者の知識やスキルの習得度を測定
・実技試験:受講者の実践的なスキルを測定
・成果物:成果物を評価して、受講者の理解度やスキルの習得度を測定

運用体制の整備で、企業内大学の各種プログラムを効果的に運用し、社員のスキルアップやキャリアアップを支援できます。

⑧データ収集PDCA

企業内大学の各種プログラムを効果的に運用するには、データを収集してPDCAを回すことがカギになります。

データ収集とは、プログラムの実施状況や受講者の反応などを収集することです。PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字をとった言葉で、業務改善や品質向上などに用いられるフレームワークです。

企業内大学を設立するメリット

それでは、改めて企業内大学を設立するメリットを解説します。

社員の能力が向上する

企業内大学で社員のさまざまな能力が向上します。その理由は、以下のとおりです。

・必要な知識やスキルを習得できる

企業内大学では、社員のニーズやスキルレベルに合わせたプログラムを提供しています。社員は必要な知識やスキルを習得できます。

・実践的なスキルを身につけることができる

企業内大学では、座学だけでなく、実習やOJTなどを通じて、実践的なスキルを身につけられます。

・キャリアアップにつながる

企業内大学で学んだ知識やスキルは、キャリアアップにつながります。社員はモチベーションを高めて学習に取り組めます。

具体的には、企業内大学では以下の能力向上につながります。

・専門知識

企業内大学では、ビジネススキルや職種別のスキルなど、社員が身につけるべき専門知識を学べます。

・問題解決能力

企業内大学では、課題解決の考え方や手法を学べます。

・コミュニケーション能力

企業内大学では、プレゼンテーションやディスカッションなどの機会を通じて、コミュニケーション能力がアップします。

・リーダーシップ

企業内大学では、チームでプロジェクトを進めるなどを通じて、リーダーシップが身につきます。

社員のモチベーション向上と離職の防止

企業内大学は、社員のモチベーションを向上させて離職を防止する効果が期待できます。

社員のモチベーションが上がる理由は、以下のとおりです。

・成長を実感できる

企業内大学では、社員は必要な知識やスキルを習得し、成長を実感できます。仕事へのやりがいや達成感が高まります。

・キャリアアップにつながる

企業内大学で学んだ知識やスキルは、キャリアアップにつながります。社員は将来への展望が開け、モチベーションの維持に役立ちます。

・企業への帰属意識が高まる

企業内大学は、企業が社員の成長を支援している証佐です。社員は企業への帰属意識が高まり、離職を防ぎ、優秀な人材の定着率が上がる可能性が高くなります。

また、企業内大学では、社員が同じプログラムを受講することで、接点の少ない人同士が出会う機会が増えます。グループワークやディスカッションなどのアクティブラーニングを取り入れることで、社員同士の積極的な交流が可能になります。

このような交流やコミュニケーションを通じて、社員同士の理解が深まれば、社内のつながりや一体感が生まれ、円滑な業務遂行につながるでしょう。

優秀な人材を確保しやすくなる

人的資本の情報開示は、企業が人材に投資している実態を示します。優秀な人材は、人的資本の拡充に力を入れている企業を評価し、入社を希望する可能性が高くなります。

また、企業内大学は、企業が社員の成長を支援している事実を示しています。優秀な人材は、企業内大学を設置している企業で働くことで、自身のスキルやキャリアアップを図れると評価する可能性があります。企業内大学の設置は、雇用市場における差別化につながり、大きなアピールポイントとなります。

社内での広報活動や従業員への啓蒙活動、外部への採用ブランディング・情報発信など、多角的なアプローチで社内外問わず、企業内大学の存在を広く知らせる活動が必要です。

企業内大学を設立するデメリット

企業内大学を設立するデメリットについても説明します。

導入・運営に手間と時間がかかる

企業内大学の設立・運営には、講師の人件費や教材費、施設費など、さまざまなコストがかかります。

具体的には、以下の点が挙げられます。

初期投資や運営コストがかかる

企業内大学を設立するにあたっては、社内で一から制度作りをする方法とコンサルティング会社に委託する方法があります。どちらの方法をとるにしても、企業内大学の設立・運営には、初期投資や運営コストがかかります。どこまで将来に投資できるか、綿密な計画が必要です。企業の経営状況によっては、導入が難しい場合があります。

社員の理解と協力が得られないと効果が出ない

企業内大学は、社員の自主的な参加が基本となります。そのため、社員の理解と協力が得られないと、効果が出ない場合があります。社員のモチベーションによって継続率も左右されてしまいます。

時代の変化に合わせるのが難しい

企業内大学のプログラムは、時代の変化に合わせて見直すことが大切です。常に最新の情報を収集して、プログラムをアップデートしていく必要があります。

講師選びが難しい

企業内大学で講師選びが難しい理由は、以下のとおりです。

社員のニーズやスキルレベルに合わせた講師が必要

企業内大学のプログラムは、社員のニーズやスキルレベルに合わせたものでなければ、効果を発揮しません。社員のニーズやスキルレベルに合わせた講師を採用する必要があります。外部講師を依頼しても受講者のレベルに合っていなかったり、一般的な内容で実践的でなかったりする可能性もあります。注意が必要です。

専門的な知識や経験を持つ講師が必要

企業内大学のプログラムは、専門的な知識や経験を持つ講師が実施することで、効果を発揮します。専門的な知識や経験を持つ講師を採用する必要があります。しかし優秀な社員を講師に選定したいと思っても、仕事ができても教えることは得意ではないとか、仕事に集中したいため講師を望んでいない場合もあります。社内認定講師の場合には、講師としての教育の実施も必要になります。

講師の採用に時間と労力がかかる

企業内大学の講師は、社内外から採用できます。社内から採用する場合は、社員の中から適切な人材を探す必要があります。公募などで社内から募集する場合は、面接や試験など選定に時間と労力が必要です。また、社外から採用する場合は、講師の選定や採用に時間と労力がかかります。

企業内大学の設立を成功させるポイント

企業内大学の設立を成功させるポイントとして、キャリアアップの体制を整備することが重要です。企業内大学は、社員のスキルアップやキャリアアップを目的として設立されます。

しかし、企業内大学で学んだとしても、キャリアアップにつながらないと感じると、受講者の意欲は低下してしまいます。こうした状況を避けるため、企業内大学で学んだことをキャリアアップにつなげられる体制の整備が、受講者が意欲的に取り組むポイントになるのです。

キャリアアップの体制を整備する具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

・受講履歴を管理し、キャリアパスに反映する

受講履歴の管理で、受講者がどのようなスキルを身につけたのかを把握できます。その情報をキャリアパスに反映すれば、受講者がキャリアアップに向けて学習を継続しやすくなります。

・上司が部下の受講履歴を確認できるようにして、評価しやすくする

上司が部下の受講履歴を確認できるようにすることで、部下のスキルアップを評価しやすくなります。また、部下が学んだことを仕事に生かしているかを把握しやすくなります。

・キャリアアップに関する情報を提供したり、相談に乗ったりする窓口を設ける

キャリアアップに関する情報を提供したり、相談に乗ったりする窓口を設け、受講者がキャリアアップに向けて行動しやすくしましょう。

これらの体制整備で、企業内大学が受講者の意欲向上やキャリアアップにつながり、企業の成長に貢献するようになります。受講者のニーズや目標をしっかりと把握して、時代や環境の変化に合わせ、体制を継続的に改善していくことができます。これらの点に注意して、企業内大学の設立を成功させましょう。

まとめ

企業内大学とは、企業が自社社員を対象に提供する教育機関です。従来の社員研修と異なり、社員の自主的な参加が基本であり、専門的な知識やスキルの習得だけでなく、キャリアアップやリーダーシップ育成など、幅広い目的の達成を目指しています。また、次世代リーダーの育成にも役立ちます。

企業内大学は、企業と社員の双方にとってメリットのある制度です。企業は、企業内大学の設置・運営で、社員の成長と企業の発展を同時に実現できます。設立や運営にコストはかかりますが、この機会に、企業内大学について検討してみてはいかがでしょうか。

人的資本経営支援も日経。

日経人財グロース&コンサルティング

人的資本開示や人材育成・研修導入に関するお悩み、日経の経験豊富なコンサルタントへお気軽にご相談ください。

資料ダウンロード お問い合わせ