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日特建設の社外取締役、役割は「厳しい親友」

女性の社外取締役育成講座でインターンシップ始まる

日特建設の女性社外取締役インターンシップ(8月8日、日特建設本社)

日特建設の女性社外取締役インターンシップ(8月8日、日特建設本社)

日本経済新聞社が7月に開講した「女性の社外取締役育成講座」で、受講生が企業に出向き、経営会議の議論を学ぶインターンシップが始まった。受講生30人は、製造業やスタートアップ企業などに分かれて、各社の社長や社外取締役らと議論を交わした。実際の取締役会での議題を題材にして、社外取締役就任に向けて現場感覚を養った。

初回となった8月8日には、東証プライム市場に上場する日特建設に、受講生5人が出向き、社長や社外取締役らと討議した。日特建設は、ダムの基礎工事や法面(のりめん)工事が主力で、売上高の7割を公共土木工事が占める。インドネシアでの地下鉄建設など、東南アジアのインフラ基盤整備にも注力している。日特建設から和田康夫社長をはじめとする7人の取締役が参加した。このうち、岡田直子さん(ネットワークコミュニケーションズ代表取締役)と中村克夫さん(陽光代表取締役会長、セントラルアメニティサービス代表取締役会長)が社外取締役を務める。

岡田さんは、日特建設の社外取締役に就任してから3年目を迎えた。企業のブランディングと広報が専門で、建築や土木工事に関する知識があるわけではないという。そこで、取締役会に出席して得られる情報だけではなく、現地や現場に積極的に出向いて、感じたことを意見として発言している。最近も、インドネシアの地下鉄建設関連プロジェクトを理解するために、ジャカルタまで出向いたそうだ。「批判するだけなら簡単です。どうやって変革していくかまで提案しています」といい、「社外取締役は、厳しい親友でなければならない」という心構えで、取締役会に臨んでいる。

中村さんは、都内で不動産業を営んでいる。社外取締役としての姿勢は「岡田さんとは対極にある」そうだ。社員に対して情が湧かないように、会社とは適切な距離感を保ちつつ、中立の立場で常識を働かせて考えることで、会社に対して疑問点をただしている。「性悪説の原則に立ち、取締役会で空気を読まず、会社に忖度(そんたく)せず、社員と少数株主を守る」という視点を大事にしている。法令違反などを見過ごして会社に損害を与えた場合には、株主代表訴訟で責任を追及されるという点で、社外取締役の任務の重大さを常に意識しているそうだ。

期待される「大いなる素人」の疑問や質問

和田康夫社長によると、「ふたりは、全くタイプの異なる社外取締役」だという。

B2B(事業者間取引)の会社が、広報する必要がありますか――。日特建設は、ダム工事などに強みを持つ土木工事会社なので、かつては「知る人が知るでいいというスタンス」(和田社長)だった。だが、岡田さんが社外取締役に就任して以来、情報発信に対する意識改革が進んだそうだ。社内公募でブランドメッセージを募り、岡田さんのアドバイスを受けて、デザインに優れた新たな業者にホームページのリニューアルを依頼した。採用情報のサイトに掲載した「5分で分かる日特建設」は、好例だ。岡田さんは「新しいことにチャレンジするときは、励ます親友も必要」といい、監督と助言の立場を使い分けている。

一方、中村さんに和田社長が期待する役割は、「大いなる素人」としての疑問や質問の投げかけだという。専門家でなくても理解できるように、会社は説明責任を果たさなければならないからだ。中村さんは、不採算となった工事を受注した経緯について「傷口に塩を塗るような質問」も辞さない。上直人取締役常務執行役員は、中村さんの「見当違いかもしれませんが」で始まる質問によって、「日特建設の常識は世間の非常識だという現実を学ぶことが多い」という。

和田社長は「社外取締役の意見を引き出し、議事を進行させるのが自分の役割」だという。社外取締役による遠慮のない意見が、型にはまらない取締役会につながっているそうだ。

(魚住大介)

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