社外取締役の全体像を早回しで学ぼう
女性の社外取締役育成講座エッセンシャル版 11月開講
セミナーレポート永田教授 現役の社外取締役から直接、話が聞ける生の空気感に、講座の意味があります。私が担当する初回の講義では、社外取締役として果たすべき視点の整理や必要なスキルについてひもときます。私は、社内取締役より社外取締役のほうが難しい役割を担うと思っています。社内取締役は、業務の視点を突き詰めながら経営層になっていきます。一方で、社外取締役は、業務の執行には関与しないけれども、経営状態を理解していなければなりません。経営の基礎知識はもちろん、第三者の目線も必要です。ときには、社長に対して厳しい意見を述べなければなりません。自分は会社に貢献できると自分を信じる力も必要になります。そういった精神的な自立性についても伝えたいと思います。
滝に打たれる必要はなかった
木村所長 永田先生の講義では、女性のキャリアとウェルビーイングもテーマになっています。
永田教授 ウェルビーイングをヘルスと置き換えると、理解しやすいかもしれません。私たちには、3つのヘルスがあります。身体的、精神的、社会的な健康です。女性は、ヘルスリテラシーがパフォーマンスと関係します。知っているようで知らない女性のヘルスに関する知識を身に付ければ、社外取締役となった際に、女性社員の身体的な健康に貢献できるはずです。
つぎに、日本では依然としてジェンダーギャップが大きく、社会的、文化的なストレスがあります。一緒に学ぶ仲間と語り合い、悩みを共有して、共感することで精神的な健康につながるでしょう。さらに、希少な女性の経営層として、社会の健康度の向上にも貢献できるはずです。そういったウェルビーイングの視点からも、皆さんと議論していきたいと思っています。
「女性のキャリアとウェルビーイングもテーマになっています」(木村所長)
木村所長 ビジネス系の講座でウェルビーイングの視点は、なかなか聞けません。
永田教授 女性は体の変化とキャリアの変化が重なりがちです。更年期という自分のヘルスを管理しないといけない時期と、経営層になる時期が重なるのです。そこの知識があれば、キャリア形成がスムーズになります。
木村所長 パフォーマンスにも関わってきますね。
永田教授 私が海上保安庁初の女子学生として入学し、バリバリ仕事していたときには、女性のヘルスがキャリアに影響することをまだ知りませんでした。20代、30代のころは、メンタルを鍛えれば体はなんとかなると考えていて、滝行に行ったこともあります。滝に打たれれば、仕事に向き合う姿勢と強いメンタリティが確保できるんじゃないかと思いました。ただ、ヘルスリテラシーの知識さえあれば、滝行に行く必要はなかったのではないかと、後で気がつきました(笑)。
木村所長 滝行は、精神集中に良さそうですが、思い立ったら行動に移しがちですよね。
永田教授 自分を責めがちになりますね。でも、ヘルスリテラシーを身に付ければ、体が健やかになる方向に考えが変わります。
自分のスキルマップを描こう
木村所長 スキルマトリックスを理解しようという講座も、新たに設けました。社外取締役として貢献するために、自分はどんなスキルを持っているかという棚卸しです。
永田教授 企業は、社外取締役として、どういうスキルを持った人材が必要か考えます。社外取締役を目指す人は、自分のスキルの棚卸しが済んでいて、スキルマップが描けている必要があります。上場企業だと、取締役のスキルマトリックスがネット上で公開されていたり、有価証券報告書に載っていたりします。株主総会の招集通知には、取締役の専門領域としてスキルマトリックスが載っています。社外取締役の候補者と企業をマッチングする際には、必要不可欠な材料になります。